PHASE-76【侵入者】

「確かにいるようだな」


「だろう。オーク達だろうか?」


「家捜しでもしてんのか?」

 敵をまいたとはいえ、この家はやはり目立ったか。


「音がしたのは、なんか割れた音だけ? その前には?」


「ない。となれば相手は、追っ手のオーク達ではないだろう」

 確かに、ドアを蹴破って、問答無用で入ってきそうだもんな。ベルが気配を感じたと言った時点で、ひっそりと不法侵入してきたわけだし。


「となれば、相手は一人かな?」


「だろうな」


「野盗?」


「の、可能性が高い」

 静かに部屋のドアを開いて、一階に移動する。

 手には部屋に置いてあった金属バット。ゲームの主人公は別段、部活をしていないのに、金属バットがあるという不思議――――。

 一階の階段部分では、すでにゲッコーさんが待機していた。


「相手は一人ですか?」


「ああ、音からしてそうだろう」

 言いつつ、CZ75 SP-01をスライドさせる。

 ベルも手にはナイフを持っている。小太刀サイズで、マニアに人気があるククリナイフに似た形状だ。


「うん?」


「どうしたベル?」

 囁きながらのやり取り。


「敵意を感じない」

 敵意とかで判断するのか。すごいな。でもそれって信頼出来るの?

 俺との初対面の時は、俺、ベルの炎に熱さを感じたからね。少なからず俺に敵意を感じてたわけだろ? 俺みたいないたいけで、汚れなき存在に対して。

 信じられるの? その敵意探知。


「なんだ。不快さを感じるぞ」

 はい……。良き探知ですね。

 ――――ガチャンと、またも音だ。食器が割れているようだな。

 てことはキッチンにいるのか。

 三人で小さく頷きあって、意思疎通を行い、キッチンへと向かう。


「ん?」

 先頭を進むゲッコーさんが分かりやすいハンドサイン。

 俺たちに動きを止めるように指示する。

 五指を三指に変更して、一本ずつ折っていく。

 カウントダウンだ。

 握り拳になったところで、ゲッコーさんは銃口下部に備えたフラッシュライトを音の方に向け、俺たちもその横で構える。


「動くな」

 と、ゲッコーさん、低くも強い語気で威圧。


「きゃあ!」

 え! きゃあ!?

 動き出す人影はトタトタとした小さな足音。


「女の子?」


「いい洞察力だ」

 正解のようだ。ゲッコーさんもそれが原因だろう。引き金に指をかけない。

 フラッシュライトで追いかけるだけだ。

 手には指揮者が持つような、指揮棒より一回り大きなものを持っている。先端には青色の宝石が付いている。

 フードを目深に被っているから表情はよく見えない。

 が、次ぎに、侵入者の手にした棒の先端の青い石が、赤色に輝く。


「これは何か来る。伏せるんだ」

 勢いよくベルに体を押し倒されると、俺の直上を熱風が通過し、ボンッという爆発音がリビングに轟く。


「あっつ! ベル!?」


「私ではない」


「あの侵入者だ」

 ゲッコーさんは伏せずに膝射しっしゃの姿勢。素早くテーブルを遮蔽物にしつつ、相手の行動を一部始終見ていた。

 流石なのは、テーブルをちゃんと、四十五度傾斜にしてるっていうね。


「火の玉が棒から現れた。魔法ってやつだぞ! トール」

 初めて見るものだったからか、ゲッコーさんは若干興奮している。

 ここにきてようやく魔法にお目見えしたわけだが、興奮するほどではないでしょう。火の玉どころか、俺を押し倒したロケットおっぱいの美人中佐は、炎の津波をおこせますよ。

 貴男だって何もない空間から、オーバーテクノロジーな武器を出すし。

 貴男が活躍するゲーム内には、とんでもない人知を超越した力を使用するボス敵だっているし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る