俺、異世界に来たんだってよ
PHASE-04【光の先は荒廃した世界でした……】
「あ~コホン」
わざとらしく咳を一つ行っている。締めの台詞でも言うのだろうか?
小馬鹿にされている間に能力は与えてもらった。
「――――では、力を与えられし存在トール!」
「トートーでもトールでもなく、亨!」
「いいじゃない。いまから行く所に似合ってるわよ。ファンタジーの世界なんだからトールで。では、君の望む能力は与えました。頑張って魔王を狩ろうぜ♪」
一狩行くみたいな感じで軽く言いやがって!
「名前はちゃんと呼ぶのがマナーだよ」
「男のくせに細かいわね。分かったわよ。元々はPCゲーで、CS版として発売された作品を購入するも、やっぱり
「長いよ! そして……トールでいいです……」
バレバレじゃねえかよ……。
くそ、ますますこれが現実なら恥ずかしくてたまらない。
ええい! こうなれば願望を!
「魔王を倒したら、生き返らせてくれると嬉しいな~」
俺としては、ハッスルゲームもだが、年末にも発売されるゲームをいまから楽しみにしている。
何より、親より先に逝くのも申し訳ない。
でも、無理なんだろうな……。
「いいわよ」
あっさりだな。
よし! 未練たらたらなんだ。年末ラッシュを謳歌するためにも頑張らないとな。
でもって、この状況は夢であってくれ! そしたら問題なく、家で夏休みの続きを堪能できるんだから。
「夢じゃないから諦めなさい。てことで、行ってらっしゃい。後でフレンド登録してあげるから」
夢ではないと突き放しやがる。俺が望んだ物を与えながら――――。
しかしなんだよ。フレンド登録してあげるとか。なんて上から発言。
忌々しく思っていると、俺の足元の床から音もなく、木製のドアがせり上がってくる。
ドアのつくりは観音開き。
「ここから行けってこと?」
「そう! 名付けて、どこで○ドア~」
「やめろ!」
なんだこの死神は。日本のサブカルチャーに精通してるのか?
「健闘と幸運を祈る」
敬礼スタイルが垂直に近い。海軍式だな。いちいちマニアックだ。
まあ、それを理解できてる俺も相当だけどな……。
――――ドアノブを諸手で握る。カチャリと音が耳朶に届く。
両腕を引いて、観音開きのドアを開くと、こことは反対の真っ白な空間。
光によって、白い空間となっているようだが、目に刺激がこない不思議な光。
そこへと足を踏み入れ数歩――――。
途端に、荒廃とした光景へと変わった……。
「は?」
見渡せば、至る所から黒煙が上がり、火の粉が舞っている。
黒煙が空を染めあげ、建物は炎に包まれている。
建築様式は中世を題材にした映画なんかで見る、石壁や煉瓦。それに藁で出来た屋根。
瓦で出来た屋根もあるけども、目に映るそれらは崩れ、穴が空き、人が生活を営む事は出来ない状態になっている。
突如としてそんな場所に俺の体はあるんだが、超展開すぎて、やはり夢なのかと思ってしまう。
でもそれを裏切るように、鼻孔に届く煙の臭いが、現実だと伝えてくる。
夢と違って、死神のセラと出会ってから、記憶がぶつ切りじゃないんだよな。
現状の俺は、小路にポツンと佇んでいる。
大人が横に三人並べば窮屈なくらいの、道幅の小路でポツンだ。
状況を確認しようとした時、「きゃあ」と、悲鳴が聞こえてきた……。
俺としては関わりたくないので、声とは反対側に――――、
「きゃぁぁぁぁぁあ」
――……向いた方向からもバッチリと耳朶に届いた……。
小路だし、何か起こっているなら、ここだとどのみち逃げ場がない。
仕方がないので、出来るだけ身を低くしながら小路を抜ければ――――。
「う~ん。なんてこった……」
鎧を纏った兵士たちが倒れている。
同じ鎧を装備しているから、同じ軍勢の人たちだろう。
倒れている地面には、ついさっき倒されたという事を伝えるように、鮮血が流れている。
後ろ袈裟が致命傷となったようだ。逃げている時にやられたのかな?
驚きながらも状況を推測する俺って、意外と肝すわってんのかな?
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