PHASE-02【アスファルトの温度は伝わらない……】

 ――――俺が炎天下で焼けたアスファルトの上で、血を流して仰向けに倒れている。

 死神が言ったように、縁石に後頭部をぶつけている。

 え? 夢、現実、どっちだ。


「混乱はあるけど、少しは現実としても考えてくれるようになったわね。じゃあ、早速」

 ローブの胸部分に手を突っ込んだら、タブレットが出てきた。

 あの世もハイテクの波が到来しているのだろうか? 

 しかし、ノートサイズがどうやって収納されていたんだろうか? 谷間は四次元につながってるのか?

 などという推測は、次に目に飛び込んできたロゴマークによって、かき消された。

 ――……うん……、背面には林檎のマーク……。

 あれか? 天へと旅だった実業家が、今度は天国に、シリコンバレーみたいな一大拠点を展開し始めたのだろうか? 

 あの世もイノベーションなんだな。


遠坂とおさか とおる――――略してトートーっと」


「いやいや!」

 略すなよ。なんだよその水回り製品に秀でた呼び方は! トートーじゃねえよ! 遠坂 亨だよ!


「中学までは真面目に剣道に打ち込み、三年の時に県大会で準優勝。更に二段にも昇段。二年、三年の時には県の強化メンバーにも選ばれたのに、それが今じゃ廃人ゲーマー一歩手前と――――」

 やっぱり夢だな。俺の個人情報をここまで知るのは、これが俺の夢の中だからだ。


「高校は別段、剣道が有名な学校ではなく、自宅から近いって理由で選択。彼女は未だにおらず、出来る気配もない。男友達とははっちゃけるけど、女子が一人でも入ると、借りてきた猫みたいに押し黙る。初手が肝心の高校の四月、五月に結果を出せず、女子とリアルでは上手く打ち解けられなかったから、結果、二次元に走る」

 もう、殺して………………。


「大丈夫、死んでるから」

 くそ! 心を読まれるのってツライ……。


「では、辛い亨君に選択肢」

 何だよ選択って? 天国か地獄かって事か? それって自分で選択できるのか? 迷わず天国を選んでもいいのかな?


「天国に行って、新たに生まれ変わるまで安寧に暮らすか、現状の姿で別の世界に行くか」


「別の世界?」


「そっ、別の世界。貴男は生前は良くも悪くも普通だったからね。地獄の選択肢は除外される」


「だったら選ぶの簡単じゃん」


「天国だとすると、次に転生するのはランダムよ」

 なん……だと…………。

 となると、人間じゃない可能性もあるのか。


「生きとし生けるものからの選出だからね。人間になれる可能性はすっごく低いわよ。蟻かシロアリか、はたまた蜂か」

 なんで社会性昆虫ばかりが選択肢なんだよ。普通の俺なんて完全に下っ端の働き蟻じゃん。


「サムライアリの奴隷狩りにあうの待ったなしね」

 うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!

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