明日も・・・

勝利だギューちゃん

第1話

僕は、朝早くに起きる・・・

遅くても、5時には起きる・・・


仕事ではない・・・

部活動の朝練でもない・・・


町を、散歩するためだ・・・


僕はこの町が好きだ・・・

生まれ育ったこの町が・・


できることなら、独り占めしたい。

でも、それは出来ない・・・


ならせめて、朝早くに散歩をして、すこしでも優越感に浸りたい・・・

そんな感じだ・・・


この辺りは、階段が多く、迷路のように入り組んでいる・・・

なので、初めての人は間違いなく、迷う・・・


そのために、この町の人はその手助けをする・・・

いつのころからか、それが当たり前になっていた・・・


朝早いが、既に仕事をしている人もいる・・・

そんな人たちとは、挨拶を交わすのが、礼儀になっている・・・


急な坂を下ると、目の前には海が広がる・・・

漁船のある港は、もう少し向こう・・・


でも、海には用はない・・・

近くにある、高台に登る・・・


「もう、遅いよ」

「ごめん、ごめん」

「罰として、私に紅茶奢りなさい」

「えらそうだね」

「悪いのは君でしょ!」

「わかりました。買ってきます」

近くの自販機で、紅茶を2本買った。

ひとつは僕だ・・・


「気がきくね。ありがとう」

「いいえ、どういたしまして」

「ねえ、君はこの町好き」

「うん」

「私も・・・」

「一番だね・・・世界中で・・・」


毎朝、この場所でひとりの女の子と会話をするのが、楽しみになっている。

歳は僕と、同世代だろう・・・

でも、僕を君と呼ぶところは、年下ではあるまい・・・


でも、彼女に名前すら知らない。

僕も、彼女に自分の名前を教えていない。


ただ、この町の住人であることは、確か・・・


いつしか、頻繁に顔を合わせるようになり、会話をするようになった・・・

でも、互いの干渉はしないでおこう・・・

そう、約束した・・・


それを、守っている・・・


ただ、ひとつだけ訊きたい事があった・・・

名前はいらない、個人情報もいらない。それは知らないでいい・・・


訊きたいこと、それは・・・


「明日も会えるよね?」


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明日も・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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