[3] 死にたい
死にたい。
結局辿り着くのは、この4文字だった。
例えば、夜の布団の中で。
例えば、朝の玄関で。
かったるいとか、面倒とか、そういうレベルではなく、
思考すら停止するような感覚だった。
いや、停止してはいない。
むしろ、動きすぎているんだ。
考えに考えを巡らせすぎて、
結局何が大事なのか、わからなくなってしまった。
僕がいなくても、世の中は成り立つ。
なのに、僕がいないと文句を言われる。
僕がいなくても、僕以上の適役がいる。
なのに、誰かしらが僕をがんじがらめにする。
どうして。
堂々巡りの問いに、空回りした脳は答えてくれない。
ある休日の昼下がり。
僕は、太陽が真上に昇る頃まで眠っていた。
朝方まで寝付けなかったからだ。
布団から出るのも億劫で、枕元のスマートフォンに手を伸ばした。
とはいえ、何もすることがない。
通知の来ているゲームも、今はやりたくない。
死にたい。
ふと思い浮かんだありきたりの言葉に、心の中で苦笑する。
SNSの検索窓に、両手の親指でそれを入力してみた。
ある問い合わせ先が表示された。
自殺防止の団体か何かか。
いつからこんな表示がされるようになったのだろう。
以前にも同じように検索をしたことがあったが、
こんな表示はされなかったはずだ。
少しだけ、イラっとした。
ここですら、聞いてはいけないのか。
支援をするはずのその表記が、
どうしてか、僕を追いやる言葉のように見えた。
外は晴れている。
誰もいないこの部屋にも、光が届いていた。
僕はスマートフォンを放り、小さく、その4文字を呟いた。
短編集 ー死ー NEONEO @neoneo_2525
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