月に歩いて

加藤旭

第1話

青年


 僕はもう助からないらしい。


確かに、体調は悪い。というか、そうだな・・・。


もともとあまり強い方ではなかった。

疲労が鈍くずーっと、続いている。


生まれてからずっと苦痛を味わい続けているようなものだった。

そろそろ28歳になる。


病とずっと共存してきた。


正直、よくこの歳まで生きれてこられたものだと思う。

何度か死に直面したが、生きてた。


あの時、死んでいれば楽になれたのにと思う。

ただ、僕は今生きている。


今宵は満月だ。

僕はなんのために生まれてきたのだろうか。

まだこの世でなすべきことがあるのだろうか。

 見えないものが見えて、悪いのだろうか。

こんなこと嘆いても、始まらないのはわかっているが、

そうだな、感謝を忘れたことはない。


死を意識するから、感謝できるのだろうか


もう、立ち上がる力もない。


 ろくに働くこともできなかった。

学校だって行けたけど、卒業できなかったな・・・。


 せいぜい、両親より長生きしたかったが、無理だったみたいだ。

親不孝な子供で悪かったと思ってる。

後悔はない。反省は多いけど、今はなんだか、気持ちが楽だ。


 僕の頬を一筋の涙が流れる。

もう、耳も聞こえないから、誰かが騒いでるのはわかるんだけど、聞こえない。

そうだな、健康になったら、長く働いて見たかったな・・・。

 あぁ、これが後悔なのかな。でも、違うかな?


はぁ・・・。

手元にある、日本酒をぐびっと飲んだ。いや、飲み干した。


幸せな人生だったよ。ありがとう。

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