第十話 ガレア大邸宅にお邪魔する

「やあ、こんばんは。

 今日は凄い雨だったね」


「うん、僕もびしょびしょになった!」


「ママ大丈夫かな……?」


 あ、話の続きだったね。



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 試合が終わって凛子さんと賢治さんが話しかけて来た。


「ねえ竜司君、打ち上げあるんだけど、良かったら一緒にどう?」


「え……?

 でも僕は何もしてないし……」


「そんな事は無いさ、君がいないとガレア君と知り合えなかった。

 君がいたから向こうのやり方も解明できたわけだし」


「おう、ボンズもきーな」


 ワタナベさんも同意してくれた。


 正直に言うよ。

 行きたくてたまらなかった。


 ここには僕を蔑む大人も腫物を触るような扱いをする大人も居なかったからね。

 すぐに了承したら図々しい奴に思われるかもと考えてちょっと泳がせてみたんだ。


「えと……

 じゃあお言葉に甘えます……」


「よし決まりだ。

 じゃあ早速、帰り支度をしよう」


「じゃあ、私は娘と先に帰って準備をしておくわ。

 賢治さんよろしくね」


「は、はい!!

 任せて下され!

 ……いや、下さい!」


 瀬戸さんの凛子さんを見る目がおかしかった。


 何かカンナちゃんに萌えているガレアを見ているような。

 大分後になって気づいたけど瀬戸さんは凛子さんの事が好きだったんだね。


 え?

 二人はどうなったのって?


 今は凛子さんは瀬戸凛子になっているよ。

 そして僕らは瀬戸さんに連れられて、ある広めの家の前に着いた。


 ガレアも一緒だ。


 表札「蘭堂」


「ええっ?

 ここって……

 もしかして凛子さんの家!?」


「驚いただろ。

 凛子さんて凄い人なんだよ。

 っと積もる話は後々。

 中に入らないと」


「ボンズ見ときー、おもろいもんが見れるで」


 ワタナベさんが珍しく話しかけて来た。

 インターフォンを鳴らす瀬戸さん。


「はい」


「ももももぅしわけありませんっ! 

 瀬戸賢治ィッ!

 他九名ィッ!

 +竜一人!

 トウチャック致しました!」


「何で謝るのかしら?

 面白い人ね賢治さんて。

 ちょっと待ってねすぐに開けさせるから。

 カンナー!」


 どうやら出迎えてくれるのはカンナちゃんの様だ。


 バタン!


 勢いよく玄関が開き、カンナちゃんが凄い勢いで走って来た。

 僕はこの時、あって思ったね。


「にゃー!」


 やはりこけた。

 平地で。


「ほらガレア起こしてあげなよ」


【べべべっ!

 別にぃっ!?

 俺はァッ!?

 カンナなんて好きじゃねえし!?

 でもどうしても行けって言うなら行くけど……】


「はい!

 頬を赤くするな!

 モジモジするな!

 さっさと行く!」


【わかったよーう】


 ガレアが倒れて起きようとするカンナの前に立った。


 絵的には緑の竜が少女を食おうとしている。

 そんな感じだったよ。


【カンナ、大丈夫か?】


「うん!

 ありがとう、ガレアちゃん!」


 少し涙を浮かべながらにっこり笑う。


【ったくしょうがねえな。

 ほら、手をつないでやっからよ】


 軽い悪態を付くガレアの顔は完全に緩んでいた。

 そんなやり取りを見てた僕らはと言うと……


「ワタナベさん。

 ホラあの竜、そんな悪い奴じゃ無いんじゃないですか?」


 と、瀬戸さん。


「そやなあ、これはワシも考え改めなあかんかもな……

 にしたかて、何や絵になるやないか」


 ワタナベさんの目線の先。

 にこにこ笑いながら上を見上げる少女とそれをまた優しい顔で見つめる竜が居た。


 中に入り、これまた広いリビングに通された。

 大人十人以上が入ってもまだくつろげるスペースがある。

 脇に厨房があって美味しそうな匂いをさせていたよ。


「あ、いらっしゃーい」


 厨房から出てきたのはエプロン姿の凛子さんだ。


 余りに眩しすぎてこれを見た僕は一気に赤面したよ。

 隣の瀬戸さんは泣いていたからね。


「もうちょっと待ってね、今ローストビーフが焼き上がるから」


 凛子さんは笑いながら厨房に戻っていった。

 この笑顔を見て待たない奴が居るなら連れてこいって言いたかった。


 みんなそれぞれくつろぎ始めた。


 床に座る者。

 ソファーに座る者。


 僕は少しでも手伝おうとカウンターに置いてある料理を運んでいた。

 四,五皿運んだ時……


【凛子、これはどう調理いたしましょう】


「ああ、グースそれは三等分に切って……あら?」


 凛子さんは僕がそちらを凝視しているのに気づいたようだ。


「竜司君紹介するわ。

 これが私の聖竜グースよ」


 その姿に少し絶句した。


 まず髪型が総白髪で歌舞伎役者みたいに後ろにバサッと持って行ってる。

 そして肌が全身白粉まみれかという程白かった。


【凛子、この方が?】


「そう私たちを助けてくれた恩人よ」


【はじめまして、我が主を助けていただき感謝いたします】


「あ、いえ……

 僕は何もやっていないですよ」


【料理はあと少しで完成いたします。

 竜司様もしばしおくつろぎください】


 ひとしきり料理を並べ終えた僕は周りを見渡した。

 端でガレアとカンナちゃんが遊んでいた。


「いっくよー!

 アステー!

 クラーーッシュ」


【そう!

 そうだ!

 そのタイミングだ!】


 また妙な稽古場がオープンしていた。

 どのタイミングだよと心でツッコミを入れた時……


 ガシャーン!


 何かが割れる音がガレアの方から聞こえた。

 どうやら遊んでいて花瓶を割ってしまったらしい。


「一体どうしたの?」


 凛子さんとグースも厨房から出てきた。


「全くカンナは……」


 ため息をつく凛子さん。


「ごめんなさい」


 しょんぼりと頭を下げるカンナちゃん。


「グース、お願い」


【了解しました】


 グースが割れた花瓶の破片に手をかざすとみるみる花瓶が再生されていった。

 再生している間凛子さんはカンナにお説教だ。


「いい?

 カンナ。

 まずちゃんと謝った所は偉いわ。

 だけどね?

 世の中には謝っても戻らないものもあるし、いつもグースが居るとも限らないのよ。

 もしあなたが不注意で事故を起こして死んでしまったりしたらどうするの?

 命はグースでも無理なのよ?」


 優しい口調で叱る凛子さんを見て不謹慎にも素敵だなあと僕は思ったよ。

 叱られたカンナちゃんの顔が見る見るうちに泣き顔に。


「うわぁぁぁん!

 ママー!

 ごめんなさい!

 ごめんなさい!」


 と、泣き出してしまった。


「よしよし、これからは気を付けてね」


 頭を撫でる凛子さん。


 すると柏手かしわでを打った凛子さん。


「さあ、皆さんローストビーフが焼けましたよ。

 乾杯いたしましょう」


「待ってたでー」


 音頭は瀬戸さんだ。


「皆さんグラスは持ちましたね」


 僕も周りを見渡した。


 凛子さんはビール。

 他のナイン、ワタナベさん、賢治さんもビール。


 カンナちゃん、僕、グースはジュース。


 そしてガレアはビール……?



 ビール!?



「乾杯!」


「カンパーイ!」


 宴会のスタート。



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「今日ははここまで。続きはまた明日」


「ねーパパー、ビールって美味しいの?」


「美味しいものでは無いなあ。

 喉で味わうものだからね」


「???」


 たつがキョトンとした顔になっている。


たつも大人になればわかるよ

 さあ、もう寝る時間だ……

 おやすみなさい……」


 バタン

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