第二話 ガレア、友達になる
2048年 某県某市
僕は
「昨日はどこまで話したんだったか。
ガレアと出会った所までだったか。
昨日も話したけど僕と一人の翼竜との出会いが僕に一歩を踏み出させたんだ」
「パパ~?
これってホントの話~?」
「パパは嘘つかないよ。
じゃあ、始めようか」
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「君は誰なの?」
僕はその竜に話しかけたんだ。
【俺?
俺はガレア。
本名はガ・レルルー・アだ。
呼びにくいからガレアって呼んでくれ。
見ての通り翼竜だよ】
ガレアは緑色の首の長い竜。
RPGとかでよく見るいわゆる洋風の竜だった。
ガレアの背中についている翼は本当に綺麗だった。
ガレアのどこが好きって言われたら真っ先に翼と答えるだろうね。
【あっ、これって自己紹介ってやつだろ?
やっぱ人間て不完全だわ。
目見て相手の事わかんねーなんて】
「あ、ごめん……
僕は
十四歳……」
【十四歳って事はガッコーって所に行かないとダメなんじゃ無いの?】
「ちょっと……
僕は……
事情があって……
学校には行ってないんだ……」
【ふーん。
ま、いいやどうでも。
それよりアステバン他にあるの?】
「あるよ……
TV版五十話と劇場版三作も」
【お前凄くね?
いや、スゲーわ!】
ガレアは大きな口をこれまた大きく開けて笑った。
【なあなあ!
劇場版、見せてくれよ!】
その時、僕は迷った。
このまま見せてもとか色々グチャグチャ頭が回転した。
そして出した答えがこれだ。
「じゃあ、ガレア……
僕と友達になってよ……
友達になってくれたら僕の持ってるアステバンは全部見せてあげるし秘蔵生写真とかも見せてあげる」
【いいよー。
俺、式まだ終わってねーし。
てかこれって取引ってやつだろ?
ややこしーな。
やっぱ人間て不完全】
「ありがとう、僕の事は竜司で良いよ」
【ちょっと待て竜司。
俺からも一つ取引をさせてもらう】
これを言われた時ドキッとしたよ。
でもその取引内容は笑ってしまう内容だった。
【俺は毎日ここに来るが、いつもばかうけを用意しておく事。
最低三袋な】
「プッ……
それでいいの?
わかったよガレア」
【頼んだぜ竜司】
後になって気づいたんだが相手と名前を呼び合うっていうのがこんなにも心地良いんだなって思ったよ。
ホントに夏中ずっとガレアは来た。
毎日。文字通り毎日だ。
九時 起床
十時 コンビニへ買い出し
十一時 帰宅
十一時半 ガレアが来る
二十二時 僕が眠たくなりガレア帰る。
二十二時半 就寝
これがガレアと知り合ってから僕の一日のサイクル。
八月中の僕のサイクルだった。
八月は毎日笑っていたよ。
特撮を見るのとネットサーフィンぐらいしかやる事が無かった僕に出来た掛け替えのない宝物だった。
もちろんケンカもしたよ。
例えば、アステバンの敵役のサイボーグハンターが自身もサイボーグなのはおかしいとかね。
怖くなかったのって?
そりゃ竜だから多少は怖かったけどオタクって人種は熱くなると突っ走るから。
相手が竜と言うのも忘れて言い合ったよ。
【だからー竜司。
俺は思うわけよ。
サイボーグを狩る奴が何で自分もサイボーグなんだちゅーの】
「ガレア違う。
それは違うよ。
サイボーグが親の仇って所を抜かしている。
親の仇ならばこそ自身もサイボーグになるというその悲しさがわからないかなあ」
【なおさらダメじゃん。
仇になるっておかしくね?】
「それは力を望めばこそだよ。
完全な竜にはわかんないかもねっ」
【何おう!
言ってくれるじゃないの】
「何だよ」
【引きこもり】
「ばかうけマニア」
【人生ドロップアウト】
「言ったなーっ!」
この時気づいたけど僕は結構手が出るタイプだったんだ。
今は違うけどね。
負けちゃったのって?
びっくりする事に五分五分だったんだ。
ガレアってば魔力を放出しても良かったんだけど、何故か殴り合うケンカだったよ。
竜の筋力ってのはサイズで決定するらしく、背丈は僕と同じぐらいだったし、僕も鍛えていたからね。
でもその後はちゃんと仲直りするんだよ。
仲直りをした後ガレアがこんな事を言っていたよ。
【ふーっ。
確かこうゆうのって仲直りっていうんだろ?
漫画で読んだよ。
後、相手がいないと出来ないってのも書いてあったな】
「そうだね……」
【俺、人とケンカしたの竜司が初めてだよ】
「僕はケンカ自体が初めてだよ……」
【でもなかなかスッキリするもんだな。
竜界だとそんな相手は居なかったしな】
「ガレアは友達居ないの……?」
【俺も竜司と一緒で向こうの世界では引きこもりみたいなものだったしな】
「え?
そうなの?」
【竜司って引きこもりじゃん?
ほかの人間と接触せずにさ】
「そうだけど、はっきり言わないでよ」
【向こうの世界はみんな自分の事しか考えてないわけよ。
「ふーん」
【テレパシー無視なんて普通だし。
穴倉にこもってる日が多くてな。
そんな世界が嫌で人間の世界に来た訳よ】
「そっか。
ガレアも大変だったんだね」
【でも人間界はおもしれーわ。
特に漫画と特撮!
もうサイコー!】
「そっか」
こうして晴れてガレアと友達となった僕。
八月中は楽しく過ごす筈だったんだけど、所詮僕は引き籠り。
いわゆる家に寄生している厄介者。
他の家族がそれを見逃す筈が無かった。
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「さあ、今日はここまで」
「ねえねえ、パパー、アステバンて家にあるやつ?
あれ、かっこいいよねー」
「そうだね」
僕は微笑みながらそう答えた。
「……じゃあ、おやすみ……
また明日……」
バタン
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