空と太陽

@okowa_love

第1話

「ねぇ、ハル。タイヨウって知ってる?」

「知ってるよ。じいちゃんの法螺話に出てくる火の玉だろ?」

「違うんだよ。あれ、じいちゃんの作り話じゃないんだよ。ソラ、っていう青い紙にタイヨウがついてるんだよ。」

「は?タイヨウは火の玉だろ?そんなところにタイヨウがあったら紙のソラは燃えちゃうじゃん。ほら、手を動かす!」




私たちの頭上は、いつも鈍い銀色の鉄に覆われている。鉄の向こう側は「ウチュウ」という私たちが生活できない空間が永遠に続いているらしい。本にそう書いてあった。

でもじいちゃんは、鉄の上には土が敷き詰められていて、さらにそこの頭上にはソラとタイヨウがあるという。ハルはじいちゃんの言葉を法螺話だというけれど、私は夢でソラとタイヨウを見たことがある。

見たことのない青のような水色のようななにもないキャンバスにただ一つ、大きなライトがついていた。じいちゃんの話とは、そこだけが違った。じいちゃんはソラにあるのは橙色の丸い燃える玉だと言っていた。

もちろんハルにもその夢を伝えはしたが、鼻で笑われた。



「ねぇ、やる気あるの?先生にチクるよ。」

ハルは鬼の形相で提出期限が明日に迫った電気学のレポート用紙をヒラヒラと揺らした。

「鉄の向こうさ、行こうと思えば行けるじゃん?」

講堂の天窓から見える鉄を見てそう呟いて見た。ハルからの返事はない。

「この居住区にある空気を何かに密封して、それを持って行ったらその空気を吸いながら鉄の上を覗くの。外敵もいるかも知れないから対マグマペットボトルを満タンにして持って行って、何かあったらそれをぶちまけるの!どう?」

ソラとタイヨウへの探求の旅(仮)を熱く語り終えてハルに意見を求めると、私の前にいたはずのハルは消えて、真っ白なレポート用紙だけが残っていた。

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