ごくらくとんぼ

八咫烏

蟷螂狩り

秋晴れの気持ちのいい朝のこと。

物干し台のベース付近に一疋の蟷螂かまきりが我が物顔でそこを占拠していると、母からお達しを受け、必要最小限度の防衛機器”ムシアミ”を手に取り現場へ緊急スクランブル発進した。

そこには大きさ五寸ほどの大蟷螂が鎌首を振り上げていた。

相手の力量を知らないうちは抵抗する積りでいるバ蟷螂かまきり智謀ちぼうを巡らせた軍事作戦を計画実行した。

孫子の兵法に「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」とあるよう、地の利、気候、敵の情勢、己の実力を知れば百戦百勝も夢ではない。

狭苦しく入り組んだ要塞から、蟷螂を障害物のない広原に誘い込まなければならない。

そこで物干し台に”ムシアミ”による急降下爆撃をくらわせ、蟷螂を広原に退避させることに成功した。

でかいなりをしている割にすばしっこかったが、無事捕獲に成功した。

虜囚りょしゅうの身となった蟷螂の処分について検討した結果、洗濯場前すぐにある学童施設にプレゼントにほうり投げてやることにした。

私は子どもたちが喜ぶ顔を想像し、まるでサプライズに子供のためのプレゼントを用意する父のような心地になった。

私は見事、軍事作戦を完遂かんすいし、なおかつプレゼントまで実行することができたため愉悦ゆえつ感に浸りながら凱旋門がいせんもんをくぐって書斎に帰還したのであった。


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