喫茶SERENAーエモい出会いは一杯のコーヒーからー
高月夢叶
喫茶SERENAーエモい出会いは一杯のコーヒーからー
コーヒーは好きだ。でも、喫茶店で働いてみたいかと言われるとそこまでではなく美味しいコーヒーが喫茶店で飲めればそれでいい。
その程度のことが今までオレがコーヒーに対して求めてきたただ一つのことだった。
それはこれからも変わることはないことなのだろうと思っていた。そう、彼女に出会うまでは。
夏休み最中、空の色は夏だというのにどんより鼠色で自分の心の内を表しているかのようで嫌になる。
信濃川の河川敷、そこは普段は人通りが少なく息苦しい人間関係から解放されて気持ちをリフレッシュできる唯一の癒しの場所だった。
が、今日限っては先客があった。オレはただ一つしかないベンチに相手にプッシャーを感じさせない態度の間隔を開けて座りお決まりの音楽プレーヤーのイヤホンを耳に装着すれば誰にも邪魔されない自分だけのマイスペース完成する。
が隣に座っていた相手がそうはさせてくれなかった。「やあ、君1人?学生?」
「ああ、そだけど。」「高校生が夏休みに河川敷で1人音楽を聴くとか駄目でしょ」
「いや、自分だって高校生のくせにいちいち言われたくないな。それにオレは好きでここにいるだ。」
そう高校の夏を青春を謳歌することができるのなんて夢や希望を持っている人だけなんだからオレはその中にいたってただ苦しいだけだ
。「ほっといてくれよ!」ベンチを立って彼女と距離をとろうとしようとするが隣から手が伸びてきて手を掴まれる。「そうやって現実から逃げる気。」そんんな何もかも見透かしたような眼差しでこちらを見てくる。
「そんな君に心が突き動かされる場所にお姉さんがつれて行ってあげようか」そうオレの目を正面から見て言ってくる。
その外見は誰がどう見ても高校生としか思えないフレッシュな容姿に小柄で華奢な体型のどう見てもオレと一つか二つくらいしか変わらない高校生にしか見えなかった。
いや、にしては出るところは出ているもので唯一そこだけは高校生じゃないだろう!と思ったけど言葉には出さなかった。
万代の街並みには様々飲食店が連なる言ってみれば食の街といっても過言ではないほどの数の食堂にレストランにカフェなどが飲食経営として展開していた。
喫茶SERENA。その聞いたことのない喫茶店は飲食店が連なる立地条件の良い市街から少し外れたところにひっそりとあった。中へと通されたオレは彼女に言われるがままにカウンター席の中央へと座らせる。珈琲豆が店内に陳列する店内は芳香な香ばしい珈琲店独特の匂いがする。
「な、なんだここはいきなり逆ナンで喫茶店に連れてこられるとは。ってそこは従業員専用のとこだろ!」と慌てて彼女を止めようとうとするもオレの制止を振り切って奥へと入っていってしまった。
「まったく、知らないんだからな」一体何を考えているんだかいきなり喫茶店に連れてこられたと思ったら店内奥へと堂々と入るなんて。
あいつはまさかこの喫茶店でのアルバイト店員なのではと一人で考え納得していると前方から声を掛けられる。
カウンターの奥から現れたのは白い無地のシャツにグレーロングエプロンに実を包んで黒いロングヘアーを後ろでポニーテールにまとめ上げあらた妙に様になっている女性でやっぱりアルバイト店員だったんじゃないかと自分の読みはあたったんだとカウンターの下で軽く拳を握る。
「お待たせ。紹介が遅れたけど私、この店の店主をやっている《 あおい》
「なん、だと。」見事にすべてが外れていた。オレと同い歳だと思っていたのが実は社会人だってことにじゃないこんなに若くして自分の店を持ち自分が進むべき道を歩んでいけているということにだ。それなのにオレはと負の感情を巡らせていると彼女は目の前でドリッパーにペーパーフィルターをセッティングして珈琲粉を入れてケトルからお湯を丸く円を描きながら
カップから立ち上るなんともいえないコーヒーの芳香ないい香りを嗅覚で
その味は今まで飲みに行ったどんな店のコーヒーよりも美味しくて同時にこんなコーヒーをさも当たり前のように淹れてしまう彼女のことが羨ましく妬ましくも思ってしまう。
いつか自分もこんな人の心を動かすことをできたらなんて夢を抱いてしまう。
そこではっとした。河川敷で彼女がいった言葉の真意とはこのことだったんだと気付く。
まんまとしてやられてしまったようで見事に葵さんの思う壺だった。
コーヒーを飲み終わりしばしの余韻に浸っていると葵さんは満足そうに微笑む。
美味しかった?と感想を訊かれるのかと今か今か胸の内を打ち明けようかと思っていると意外な一言が耳へと飛び込んできた。
「どう、覚えた?」
「えっ・・・」美味しかったの間違いでは一体何を覚えたというのだろうと首を傾げるほかならなかった。
詳細を告げぬまま葵さんはこれからしばらく用事で店を開けないといけないからその間の店番をお願いしたい。そう言ってきた。
「ちょっと葵さんいくらなんでも無理があるよ。初めて来店してあなたが淹れるコーヒーを一度しか味わったことのないオレのに店の核となるコーヒーの味を任せるなんて」いくらなんでもアナタのの味の再現するだなんて。「少し勘違いしてない、なにも初心者の君に今までのわたしの味を再現して貰おうなんてそんな酷なことは言わないよ。そうだね私が求めるのは…」
「君自身が作る味だよ。コーヒーは作り手の腕によって例え同じ豆を使ったとしても十人十色の味を見せてくるんだから」
私が求めるのは君自身の手で作りだしていく君自身のコーヒーの味かな」
「だから私が帰って来るまでにどんなコーヒーが出来上がっているか楽しみだよ。」
「あと、少し変わったとこのある喫茶なんだ。そんな喫茶だけど君の活躍を期待してるよ。」そういって葵さんは喫茶店を出て行ってしまった。
*
それからというものお客さんは来店するも皆、ズブの素人であるオレの淹れたコーヒーを飲んでは顔をしかめて帰るお客さんを見送りの思うようなコーヒーが出せぬまま申し訳ない気持ちでいた。
最後に葵さんが言い残した少し変わった喫茶という言葉は気になるけど閉店まで仕事に集中しようとカウンターに向き直る。
すると夕暮れに日が傾いてきた黄昏時のこと。これは疲れそせいか。
それか夢か幻でもみてしまっているのだろうか見慣れていたはずの店外の市街の様子が変わり空間が歪んだかと思うとそれまで通常通りだった市街の風景が変わりファンタジー世界にでも出てきそうな
そうかと思うと目の前に一人の人影がユラユラことこちらへ向かってくる。それは黒光する光沢のある甲冑を
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