雪の足跡
年末と年始にかけて降った雪は日の光によってようやく融けようとしている。
車道は車の往来で既に雪が無いが、歩道は普段往来があまりないせいかまだ雪が残っている部分がある。
最初は感触の柔らかい雪も寒暖差によってやがて氷のように固まって、いまではシャーベット状になっていて手触りも良くない。汚れも付着して見た目もよろしくない。
ぐずぐずになった雪の上には、それでも残っている足跡がある。
散歩している人の足跡と、恐らくは一緒に散歩した犬の足跡。自転車のタイヤの跡。大体はそれくらいしかない。
とここで、私は一つ違う足跡を見つけた。
犬の足跡よりも一回り小さい足跡。人と一緒に並んでいるわけでもなく、歩道と車道を横切って向かい側にいくような、気の向くままに歩いているような足跡。
恐らく猫の足跡だ。
私はその足跡を追いかけたくなるような気持ちに駆られたが、急に吹いた北風によって気持ちが萎えてしまった。
両手を温めるように持っていたホット缶コーヒーもすっかり冷めてしまった。
私は缶を開けてぐいっと飲み干し、ジャケットのポケットに空き缶を詰め込む。
さっきまで太陽の光があって暖かったのに、雲が太陽の顔を隠すごとにいきなり気温が下がるような気がするほど寒い。
いつの間にか太陽の傾きも大きくなってきている。
冬の昼は短い。
夕方になったかと思えばすぐに夜になってしまう。
夜が長く、寒いのは憂鬱だ。家に帰ってすぐさまストーブをつけて暖まらないと、気分さえも死にたくなってしまう。
帰る道すがら、どこかで猫の鳴き声が聞こえたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます