ツギ・ハ/ギ
留部このつき
第1話
闇夜に、一頭の
「オレハ、イッタイ、ナニモノダ」
獣の正面には、一組の人間の男女。若い、黒ずくめの日本人だ。二人とも、マントをつけており、腰には真っすぐで反りのない細い剣を携えている。男は左腰に、女は右腰に。女の方は獣の咆哮にビクともせず、男の方もわずかに眉をしかめるだけで、屈する様子はない。
「残念だけど、それに答えてくれる人はとっくの昔に死んでしまったわ」
女が、素っ気なく答える。表情は、よく見えない。
「さて、と。何か言い残したことが他にもあるかしら?」
剣を抜き、左手だけで構えて、宣言する。ちらりと覗いた女のマントの中は、縫い目だらけのパッチワークだった。肉体と、黒い服が一体化している。視界がもっとクリアであれば、両足のほつれや腹部や腰部のシミ――獣たちの返り血だ――も見えることだろう。
獣はわずかにあとずさりした。剣を構えた女は、一足で二者間の距離を詰め、そのまま獣の眉間を真っすぐ貫き通すだろう。女の宣言を聞いて、男も両手で剣を構えた。万事休す。
「シニタクナイ」
獣は祈るようにその言葉を口に出そうとするが、遅かった。言い終わる前に女は跳躍し、獣の眉間を貫き、剣を引き抜いて、首を切り落とし、返す刀で心臓部を切り上げた。一撃目で即死だったろうに、自分の攻撃がきちんと思い通りに実行されたことを確認して、女は冷たく言った。
「そんなこと、私だって一緒よ。誰だって『シニタクナイ』に決まっているわ。だから、強くないといけないの。
血を拭って、女は剣を納めた。男も、一部始終を見届けてから剣をしまう。
「
女――チサは
「こんなのが町中に出たら大変でしょ。空き家を瓦礫にして、自分の暴力に勝手に酔いしれてくれている内にさっさととどめを刺さなきゃ。それとも
チサに殺された
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