異世界と魔法のガチャ〜ランプじゃなくてガチャを回すと魔人じゃなくて眷属が出てきました〜

OSSU

ゲームスタート

どこからか花の匂いがする。

俺はどこにいるのだろう。

記憶が、はっきりしない。

俺はとにかく目を開けることにした 。



俺が目を開けると目の前には一面の花、花、花。

種類もわからない花が咲き乱れていた。


そしてもう一つ…

「hello world?」

ゲームのようなメニューボタンそしてチュートリアル用の説明のようなものがあった。


俺は、極めて冷静だった。

おそらくこれは、ラノベで読みアニメで見た異世界転生に違いない。そう、分析したのだ。


自分でも、この適応の速さが怖いほどだ。


しかし、全ての人々が一度は夢見るであろう異世界転生。

それを実体験できる幸福を精一杯喜び、そしてこの世界を楽しもうじゃないか。


そして間も無く、名前入力画面が映った。視界の下部に現れたキーボードに視線を合わせると入力ができる。


俺の入力した名前は…

「ヒロ、さんですね?」

そうヒロだ。

俺の本名は佐藤大翔ゲームでは、ヒロと名乗っている。


おっと、こんな自己紹介してる場合じゃないぞ。次の画面が現れた。


「歩いて下さい」

「へ?」

おっと、間抜けな声が出てしまった。

歩けってなんやねん。

おっとさらに関西弁が…。


まぁ、とにかく歩いてみるか。

ザッ− ザッ−ザッ−

おっ、

「完了」

「では次はメニューを開いて下さい」

指示通りメニューを開くと、アイテムボックス、スキル一覧、ステータスという3つが表示された。

そして、右上にゲームでよく見る所持ゴールドと所持している宝石?のようなものの数が表示されいる。

もちろんどちらもゼロだ。


そして、宝石の所持数が表示されるということは、ガチャがあるのかもしれないと、考えていると…


「この画面の説明をします。」


「まず、アイテムボックスは、容量を無視して生物以外ならどんなものでも収納できます。」


「次にスキル一覧です。これは入手した。スキルを保管できます。」


「そして、一番下のステータスは、名前の通り自らのステータス。つまり、レベル・HP・ATK・MPその他さまざまな自らの身体能力を確認できます。」


「最後に右上にあるコインと宝石についてです。これらは、それぞれゴールド、オーブといいます。」


「ゴールドは、この世界で生きるための、衣食住の確保などに使います。ちなみに、使う際は硬貨として手元に出現します。金貨が一枚一万ゴールド、銀貨が一枚千ゴールド、大銅貨が一枚百ゴールド、小銅貨が一枚十ゴールド、それ以下は一枚一ゴールドの青銅貨として出現します。」


「そして、オーブはガチャを引くときに使います。オーブ25個で、ガチャが1回となっています。オーブは、モンスターを倒した時のレアドロップ又は宝石商などから買うことができます。ちなみに、相場は金貨十枚です。」


「いや、なげーよ。」

おっと、思わず叫んでしまった。


だけど、叫んだのもしょうがないことだ。

何故なら、説明文で前が見えないという、最悪の状態なのだから。


そんな俺の心の声を無視して、チュートリアルのようなものは進行する。


そして…

「では、実際にガチャを引いて見ましょう。」


ついにきました。

やはりゲームといえばこれでしょう。

「前方に大きな魔法陣が描かれた舞台が見えますね。そこに向かって下さい。


チュートリアル通り、魔法陣の近くまで来た。

近づいてみると、もうこれは神殿と呼べるレベルだ。


こんなものを誰が作ったのか。

そして、どのような技術で作られたのか。

謎は多い。


しかし、今はその謎を上回る高揚感がある。

どのようなゲームでもある、ガチャを引く時の高揚感だ。


「魔法陣の上に立って下さい。」

もはや見慣れた文字が指示をする。


「今回は無料でガチャを弾けるようにします。」


「本来なら、このタイミングで手元にオーブを出して下さい。」


「ガチャではスキルを獲得できます。」


「では、ガチャを引くための合言葉を言いましょう。」


目の前に現れた文字を読み上げる。

「Liberation〈リザレイション〉」


すると、魔法陣が明滅し始め、頭上にさらに大きな魔法陣が出現した。


出現した魔法陣は、緑色、青色、赤色、銀色、金色、と色を変えていき、虹色になった時回転を始めた。

そして、少しずつ降下し、最後には一瞬の閃光と共に、足下の魔法陣に吸収された。


それと同時に、俺の視界にはスキル獲得という画面が表示された。


そこには、獲得したスキルのレアリティ、名前、効果が記載されていた。


今回俺が手に入れたスキルは…



『レアリティ☆6

スキル名 ガチャ神

効果 ガチャが毎日一回無料でひけるようにな

る。また、眷属を一人召喚できる。 』



眷属だって…⁉︎


俺が状況を把握できずにいると、空から一筋の光が差し込み、天使のような影が舞い降りた。


光が弱まるとそこには、美しいというよりかは可愛い一人の女がいた。


髪は短く、その色は、はかなく今にも消えそうな青。

出るところはは適度に出て、引っ込むところは適度に引っ込んでいるが、健康的な見た目である。

このような、異世界の美女と呼べるであろう女がいたのだ。



「マイ、ゴッド。私はヘスペリス。貴殿は、一兆人に一人のスキルを引き当てられました。今日から私はあなたの眷属です。」

いきなりのことで驚いたが、頭が少しずつ追いついてきた。

(うん、俺冷静すぎ!)


そんなことはさておき。

俺が一兆分の一の確率を引き当てた。

宝くじが千万分の一の確率だから…。


やばいな。

とにかくこいつが、俺の眷属になったのだな。

いやはやほんとうに…


素晴らしい。


こんな美女といつでも会えるとは。

今まで一度も思ったことなんてなかったが…、俺の運に乾杯。


てか、ヘスペリスは長い。


うーん。じゃあ…

「ヘスペリスって一々言うのは長いから、ヘスって呼ぶわ。俺はヒロよろしく。」

俺はこう提案した。


「イエス。マイ、ゴッド。」


うん。

今まで、敬語もろくに使われたことないから、そんなに丁寧に話されると逆に気持ち悪い。


これも伝えるか。

「あと、その喋り方やめよう。もっとくだけた感じで。」


ヘスは一瞬、困惑した表情を見せたが、すぐに元の通りに戻って言った。

「かしこまりました。ヒロ様。」

うーん。

まだ、固いけど後は時が和らげてくれるだろうと期待しておく。



「ところで、ヒロ様」

ヘスが言った。


「なんだい?」


「今日の無料ガチャをお引きになりますか?」


おー。

すっかり忘れていた。

スキルの効果にそんなのがあったっけ。


「じゃあ。引くよ。」

俺はとにかく引くことにした。

スキルは多いほどいいしね。


「かしこまりました。」


「では、合言葉を。」


そうか。

じゃあいきますか。

「Liberation〈リザレイション〉」


再び頭上に魔法陣が現れた。

しかし、先程と違い、魔法陣は無色のまま回転を始め、吸収されてしまった。



『レアリティ☆0

スキル名 幸運[ガチャ]

効果 ガチャの時の運がほんの少しだけ上昇。』



へ?

☆0ですって?


しかも効果も微妙。

絶対ハズレですね。


ガチャ神なのに、運がないとか…。

すると、ヘスが解説をしてくれた。


「ご主人様が御察しの通りこのスキルはハズレです。しかし、ヒロ様は運がないわけではありません。なぜならこちらのスキルも、一兆分の一の確率でしか、当たらないからです。」


いやいやいや。

ヘス?

それフォローしてるつもり?

1兆分の一の確率のハズレとか大ハズレってことだよね?


複雑な気分だ。



そんなことを考えていると、視界に久し振りに文字が現れた。


「では、説明は以上です。冒険者ギルドに向かって下さい。」


「行き方は、視界左上にマップを表示するのでそれを見て移動して下さい。」


「これは、心ばかりの贈り物です。」


一方的に説明が終了された。

そして、与えられたものは布の服。

そして、見習い冒険者の剣。


なんてやつだ。

本当に心ばかりの贈り物、だな。

布の服しか防具がない状況になるとは。


まぁ、でも今日はいいこともあったし。

「じゃあ、ヘス。町に向かうぞ。」


ここから俺たち二人の冒険記は始まるのだ。



************************



街へ向けて出発した俺たちは、程なくして街にたどり着く…はずだった。


「野生のワイバーンが現れた。」


俺の視界には、このような文字と、鋼鉄のような鱗に覆われた巨大な生物。


ワイバーンだ。


「無理ゲーだ。」


思わずこう声が漏れてしまうほど、絶望的な状況だ。


この世界に来て小一時間。

これほどまで短い異世界転生生活だったとは。


みんなさようなら。


できることなら、異世界ハーレムを堪能したかった。


エルフ見たかった。


もふもふの獣娘に触れたかった。


ロリパーティーを組みたかった。


王女と友達になりたかった。


やりたいことはこれほどあるのに。


もはやこれまで。



そもそも、こうなったのには経緯がある。


数分前俺とヘスは普通に街に向けて歩いていたのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あと少しで街が見えてくるよ。」


「ヒロ様。あそこの山にある穴は何でしょう。」

俺はヘスの言葉で山というよりは巨大な岩に空いた穴を見た。


その穴はとても深く外から見ただけでは、奥まで見渡せない。


近寄って見ても、やはり奥は見えなかった。


そして、もう奥をのぞくことを諦めようとしていた時、

「light〈ライト〉」

声がしたと思ったと同時に、ヘスの掌の上に光の球が出現した。


魔法だ。

これが、あの全ての人々が一度は憧れ、厨二病から神聖視されるもの、魔法なのだ。


ちなみに、俺は厨二病が悪いとは考えていない。

彼らは大きな夢を持ち続けられる素晴らしい人々なのだ。

そして、どこかで聞いたことがあるかも知れないが、夢を持つ限り人は一生厨二病なのだ。

おっと、話が逸れてしまった。

閑話休題。

とにかく、光の球が出現したのだ。


ヘスは魔法が使えるのかという驚きがまずあった。

そして、ヘスはこの穴いや洞窟が探検したいのかと思い横を見ると、案の定、ヘスが何かを我慢しているような顔をしている。


ヘスの意外な一面が見れて面白い。


俺に、Sっ気は無いのでちゃんとヘスの意思をくんでやろう。


「じゃあ。洞窟の奥を見に行くか。」



しばらく進むと、何か固いものにぶつかった。


うむ。これは何だ?


手触りは、ザラザラゴツゴツしていて岩のようだ。


匂いはうーん、何か獣臭いような…。


あれ。光の球が三つになっている。

ヘスがまた魔法で出したのかな?


っておい!


あれは、目だ。


大きな二つの光る眼がこちらを見ている。



――――――――――――――――――――――――


…こうして今に至る。


「逃げるぞ。ヘス。」

「はい。ヒロ様。」


しかし、魔物の頂点たる龍族の一員であるワイバーンが逃すはずもない。


ワイバーンは狭い洞窟を見事に滑空し、俺たちの前に立ちふさがったのだ。


ゲームなら、ボスと相対し緊迫した音楽が流れているような場面。


しかし、それに俺はチュートリアル開始から小一時間で挑むことになったのだ。


忘れているかもしれないが、俺の装備は見習い冒険者の剣。

そして、布の服!


勝てるはずがない。



しかし、しばらくすると地面に切断されたワイバーンの首が落ちていた。


俺の真の力が解放された…


わけではなかった。

俺が、放心状態になっていると、ヘスが手刀で一刀両断。


命は繋がった。


しかし、

「処理しました。ヒロ様。」

と笑っているヘスが怖い。


今回のことで一つ学習した。



ヘスとは喧嘩をしてはいけない。





さぁ、気をとりなおして、町へ向かいますか。

(ちなみにワイバーンの死骸はアイテムボックスに収納したよ。

あっ、ちゃんとラノベで読んだ魔核とやらも回収しといたからね。)

ていうか、


おかしいよね。

眷属の方が強いって。


ヘスにどう思われているのかな。


雑魚と思われているのかな…。


「ヒロ様。町が見えてきました。」

ネガティブ思考に落ちかけた俺をヘスの言葉が呼び戻した。


確かに、前方に町が見える。


マップによると、ラーマという町らしい。


とても分厚い外壁に囲まれた町の中に、一際大きな宮殿が見える。


あれほどまでに大きな宮殿があるということは、大きな町なのだろう。



これからの期待に満ちた生活を考え、歩いて行くと、やはり衛兵がいる。


衛兵によるとどうやら、町に入るには小銅貨一枚が必要らしい。


なんてことだ。


俺の所持金はゼロ。

俺はどうすればいいんだ。


困惑顔の俺を哀れに思ったのか、衛兵が

「魔核があるなら買い取る」

と言ってきた。


なんて優しいんだろう。


「じゃあ。これをお願いします。ワイバーンの魔核です。」

と言って俺は魔核を差し出した。


あれ?


おーい。衛兵さーん。

口を大きく開けてないで、買い取って下さーい。


「ワイバーンだって⁉︎」

衛兵さんがやっと動き出した。


「お前さんたち二人で倒したのかい?」


衛兵さんの問いの答えはもちろんノーだ。だって、ヘスが一人で倒したからね。


この答えに衛兵は、強者への尊敬ではなく、恐怖の視線でヘスを見たのだった。



まぁ。そんなこんなでなんとか町の中に入れた。


まずは、冒険者ギルドに行くか。

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