第17話 兄ちゃん

 僕は、兄ちゃんの乗った車が向かった先を見つめていた。


 うしろから鼻をすするような音が聞こえた気がして、振り返ると。


 お母さんが小さく震えながら、タオルで顔をうめている。


 お父さんは兄ちゃんが行った先を見たまま、いっぱい涙を流して鼻をすすっている。


 「悲しいの?」と僕が聞く。


 「悲しいわけないだろう。問題が一つ無くなってせいせいした」


 とお父さんはヒックヒックしながら答えた。


 ――気にしてなかったけど、兄ちゃんは大切にされてたんだな。


 僕の中から――何かは分からないが――込み上げてくるものがある。


 顔を上げると、真っ青な空が広がっていた。

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