時は明治。元は維新志士であった警察官、山口義之助は肩を並べて新たな世を拓いた友、坂堂神崎の捕縛を命じられる。
生死を問わず……その言葉を添えられて。
果たして義之助は刃を携え、神崎の前に立つ。勝敗はどうあれ、今日が友との別れの日となることを知りながら。
幕末を駆け抜けた志士だったふたりが、その先で手にした立場やしがらみによって相対して闘う。
実にシンプルなお話ですが……ただの剣劇じゃなくて、その間に心情が折り重ねられてるのがいいですねぇ。
剣を振るう意味があって、命を獲り合う意義がある。それがきちんと伝えられているからこそ、匂い立つんです。男たちの悲哀と時代錯誤なはずの「立ち合い」のドラマ性が。
これはジャンル問わずのことですが、キャラの心情が書けていない作品に情感が宿ることはありません。
それを1万字程度の物語で、これだけたっぷり魅せてくれているわけですから、本当にたまりません。
キャラとドラマの匂い、ご堪能いただけましたら!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)