序章 "特異"のある日本

プロローグ 特異を持たない少年

十五年前、全日本国民に突如発現した特殊能力”特異”

この”特異”により、日本は大きく発展を遂げ、”特異”無しでの生活は考えられないという人も少なくはなかった…


ただ一人この僕を除いては…


僕の事情を説明する前に先ずは自己紹介をしようと思う。

僕の名前は一条一(いちじょうはじめ)

両端の一のおかげで条が目立つからみんなからは条って呼ばれていて、第二大阪府に住んでいるただの男子高校生だ


「おーい!条!待ったか?」


あぁ言い忘れていたけど僕は今登校中なんだ、ついでに今来たやつの紹介もするね、


こいつは

暁烈火(あかつきれっか)

僕の親友で、特異を持たない僕がいじめられない理由でもある。

そして、僕の事情…僕は日本国民で唯一の特異不所持者なんだ。

それでも案外やってけてるからこの国はあまり"特異"に頼ってない事を知って安心する。


「烈火遅いよ!学校遅れるよ!」

「ごめんごめん、近所のおばあちゃんが道に迷っててさ」


この通り烈火は優しい。優しいが故に怒らすと物凄く怖い。

烈火の"特異"は物質を燃やす、大気中の酸素と水素が云々って烈火は言ってたけどとにかく物質を燃やす"特異"


単純な特異だけど僕達の学校の中では一番強い。

去年、烈火は一年にして、学校内の"特異"の強さを競う大会で優勝した。

このおかげで僕は学校内で一定の地位を保っている。


そういえば、一週間後にその大会があるんだっけか。

烈火は出ないようだし、去年みたいに烈火の飾りとして出なくてもいいかな。


"特異"を持たない僕が大会に参加する理由は単純明快、二人一組じゃないと大会に出られないから。

まぁ大会で烈火が無双したおかげで学校のみんなは僕の事を烈火より強いと思ってくれてるから良かったけど。


あ、さっきから付け足しばかりで申し訳ないけど僕は学校で"特異"を持ってない事を言ってない。

知ってるのは烈火と、一部の先生だけだ。


さて、無駄話をしている間に学校に着いた事だし、いつも通りの生活を送るとしますか。




ん…靴箱になんか入ってる、紙切れっぽいな。

僕は少し胸が高鳴るのを感じつつも紙切れに書いてある文を読んだ。


「あれあれ?一君にもついにラブレターが届くようになりましたー?隅に置けないねー!」

「烈火!からかわないでよ!それよりもこれ見て」

僕は紙切れの文字を烈火に見せた。


「あー?なんだ?次の大会で優勝すればお前の"特異"について教えてやろう。だって?

良かったじゃん念願の"特異"手に入れれるかもよ?」

「違う、問題はそこじゃ無いんだ、誰かは知らないけれど僕の"特異"について知ってる奴が居るんだよ!」


烈火はあまり重く考えていないけれど、僕にとってこの事を何者かに知られているという事実は心臓を掴まれているようなものだ。

何より、学校中にばら撒かれては立場が危うい。


「とにかく、この紙切れを入れたやつを見つける為にも、大会で優勝しなきゃいけないんじゃ無いか?」


確かに烈火の言うことには一理ある、大会に優勝して、紙切れを入れた奴に会えば口封じも出来るし一石二鳥だ。


「今度は北海道かぁ、楽しみだなぁ」


肝心の烈火は違う方に興味を向けてるけどね。


ここで説明、この大会には特別賞があって、上位四組は名目上は推薦生徒として、他の都道府県に旅行に行ける。

ちなみに去年は沖縄に行って、僕も烈火も楽しんで帰って来たんだ。


「よし、条!今年は北海道だ!」

「烈火…本題忘れないでよ…」


烈火はすぐに参加用紙を書きに行った。


僕たちはこの大会に出た事が引き金になってこれから先、長い旅に出る事になるとは微塵も思わなかった…




とでも言っておきますか。


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