第11話
一年前の今日。もっと言えば、お盆の最終日である今日、明子は死んだ。
夜だというのに、かなり蒸し暑い日であったことを覚えている。仕事の都合上、出勤していた彼女に対して、休日をとっていた僕は、家で彼女の帰りを待っていた。LINEであと一五分もしないうちに帰れるとの話だったので、メイと出会ったあの道を使うことは容易に想像できた。
そこは裏路地でかなり狭い場所だということもあって交通量は少なかった。だから、かなり急なカーブになっているというのに、一度も整備や点検をされたことがない場所だった。今でこそ、注意を促す看板が設置されているが、当時はそのような気の利いたものはただの一枚ですらなかった。
免許を取り立ての大学生達だっただろうか。彼女に突っ込んだのはそいつらの車だった。
それは酷い有様だったらしい。急な曲がり角に対応できなかった学生達の車はそのまま直進し、そこを歩いていた彼女に突っ込んだ。パニックの中、学生達はブレーキとアクセルを踏み間違え、彼女を車と建物の間に板挟みの状態にさせた。
運転していた学生はしっかりとブレーキを踏んだと断固として譲らなかったが、どこからどう見ても踏み間違いであることは明白だった。
彼女からはドボドボと血が流れ落ち、前進しようとするタイヤから血飛沫が舞った。ようやく、正気に戻って車をバックさせ救急車を呼んだ時には、彼女はズタボロだった。
しかし、それでも助かる可能性は十分にあったらしい。
救急車がしばらくして到着し、彼女を運ぼうとしたが、いかんせん狭い道であり、救急車がその路地裏に侵入することは叶わなかった。それで、戸惑いもたもたしているうちに彼女は完全に事切れたらしい。死因は出血多量によるショック死。
僕はこの部屋で電話を通してその話を聞いた。
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