頭押さえりゃ尻上がる
目が覚めた。
いや、
目が覚めたという表現をしてもいいものか。
目は覚めたのだが、目が開かない。
何かが僕の目を覆っているようだ。
覆っている"何か"を取り払いたい気もするが
腕が動かない。
もちろん、腕だけでなく体全体が動かない。
体が重い...というか、ものすごくだるい。
よし、諦めよう。
ここはもう潔い方がいいだろう。
それに目が開けられないからといって
人間は死ぬわけではないし。
ただ少しくらい今の状況を把握しなくてはならない。
無知というものほど怖いものはないからな。
何か情報を得なくては...
大きく息を吸うと、畳特有の匂いがする。
...ここは和室かもしれない。
よく神経を研ぎ澄ましてみると
背中ごしに感じる感触は
病院のベッドでなく布団のようである。
ベッドより少し固めで
身じろぎしてもスプリングのギシッという音がしない。
これは完璧に布団だ。
じいちゃんの家にはベッドがなく、
寝る時は布団だったから何となくわかる。
じいちゃんの家は
床が全部畳で敷き詰められていて
牧草のような少し青くさい匂いが立ち込めていた。
じいちゃんからもほのかに畳の香りが立ちこめていた。
僕はその匂いが好きだった。
あぁ、でももうじいちゃんは...
そして、僕も死んで...
「あ..れ...?..僕、事故に...」
そうだ、僕は事故にあって...
「生きて、るのか...?」
僕は生きている...?
なんで?
死んだはずじゃなかったのか?
「頭押さえりゃ尻上がる」
…何もかもうまくいくようにするのは難しいのだという例え。
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