ある魔術予備校の厄介な出来事

阿房饅頭

ある学校で起きた厄介事(前編)

私は歴史の長い大学の付属の高校にいる。

そこには大きな時計塔がある。

これを売りにしているわけではないけれども、何だか私はこれを気にしてしまう。

理由もきちんとあるのだが、それは今考える時ではない。

ただ時間が13時を過ぎ、そろそろ昼休みも終わるころ。

高校の屋上から、あの時計塔を見つめるのは学生らしいことしかない。


「もうすぐ、5時間目か」


物憂げにその言葉を語る私の名前はリリー・御子柴・アメル。

16歳のイギリス人と日本のハーフだ。


髪は腰まであって、ツインテールとかいう髪型にしている。前髪も切っていないので、左側を髪留めで止めているが、まあ追々その辺は説明しよう。

ちなみに、よくちっちゃくてかわいい金髪中学生などと言われるがこれでも、高校2年生である。


「リリーちゃん! おーい」


そう言っているうちに頭をシニョンにした少女が私を抱え込んできた。

「こらっやめろっ。やーめないっと。今日は魔術試験でしょ。だから、いつも一人のリリーちゃんと組んであげる子がいてもいいかなあって」


「おい、こら、何でそのことを言う。ここは高校だぞ」

「だからだよっ。ここは魔術学校がお金を出して作った学校だし、その魔術学校を目指すための予備校がここにあるだなんて、知っている人は知っていることだよ」


あー何か色々とぐちゃぐちゃになってきた。私が何か黙っていてもこの馬鹿が変なことを言いそうだからどうでもよくなってきた。

「水梨芳香。野水学院大学付属高等学校1年B組。元気一杯が売りのうざい女。私をボッチという失礼千万な馬鹿少女。胸はすっとん。体はでかいが、態度がうざい」


「何言ってんのうりうり」

「やめろっ、頭を会わるな。私の金髪と髪留めがあっ」

彼女の勢いに髪留めが飛んでしまう。そこには小さな瘤のようなものがついていた。


「あっ、ごめん。見えちゃったね。鬼だっけ」


「言うな痴れ者。私の母は偉大な鬼族の末裔。それとイギリス人の魔術師が結婚したらこうなっただけだ。気にはするな」

「でも、そのおかげで隠さなきゃいけないんでしょ。それ」

「まあな。しかし、それも仕方のないことだ。私にはその代わり魔力が潤沢だ。だからこうやって、火よ」


というだけで、左手に小さな灯が灯る。


「危ないよッ」

「ま、すぐに消すさ。それよりもだ、今日の試験は?」

 そう言って、手を振って火を消す。


「時計塔の時間を1時間先にする」

「はぁ? あれをか? あれは予備校の本拠地であり、魔術崩御ガッチガチのものだぞ。簡単にできる訳がないだろ」


「しらないよー。私だって、朝に丁度担任の先生と偶然会ったら、眠そうな声で『今日のやつができたら、来月のテストなしにしてやるから、1時間早くしてくれ。授業? そんなのは適当だ。適当』とかって」

「相変わらずあの無精ひげの魔術師は。で、制限時間は?」

 思い出すのは内の適当な無精ひげと髪を後ろに束ねた冴えない教師の顔。



「今日の15時から16時。ただし、まわし始めた時間からちょうど1時間だって」

「相変わらずの無茶苦茶加減だな。そんなのでできるわけがないだろ」


「でも、できたらテストなしだし。頑張ろうよリリーちゃん」

と言いながら、水梨は私にギュッと抱き着いてきた。いつものことだから、呆れ顔をしながら突き放す。


水梨は仕方ないなーというように首を振って、生暖かい目を私に向けてきた。

大体この辺はいつものやり取りだ。

どうでもいい事であり、私の気持ちが気持ちがなえてくるのがよくわかる。


「やる気がないな」

 で、次も分かる。

 

「でもぉ、できそうなのは超優秀なリリーちゃんくらいだと思うんだよぉ。ほらあ」

まとわりついてくる水梨。


私は右手で頭を押さえながら来る頭痛の幻痛に耐える。

正直、コイツはは魔力は高いのだが制御できないというよくある問題を抱え込んでいる。

だから私は水梨芳香を見捨てることはできない。

昔の私も魔力制御ができない魔術士であったからだ。

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