小説戦士・はるかな川

木船田ヒロマル

優一

 酷い臭いが鼻を突き、それが原因で目覚めた優一は、自分がゾンビに囲まれて倒れていることを知った。


 咄嗟に起き上がろうとするが手が何かに縛られていて思うように動かず、地面に突く筈だった手がいい位置に突けずに、優一は再び地面に突っ伏した。


 地面。地面だ。

 どこだ、ここは。

 暗い森? 無数のゾンビ。

 なんだこりゃ、なんだ、こりゃあ!


 疑問と混乱に満たされながら、彼は足を振る勢いを利用してなんとか立ち上がり、周りを見回す。

 低い唸り声を上げながらぐるりと周りを取り囲み、ゆっくりと近づいてくるゾンビ、ゾンビ、ゾンビ……。

 自分の様子を確かめると、高校の制服、眼鏡はある、両手は……鋼鉄の鎖と手錠だ。

 待ってくれ、僕が何をした? なんでこんなゲームのバッドエンドシーン「だけ」みたいな展開に急に放り込まれてるんだ?


「死にに来たのか?」


 女の声だった。


「それとも、助けが必要か?」


 振り向くと黒髪の少女。

 着ているのは黒いパーカー、ブレザースカート。

 紺のマフラーで口元を隠し、手には鞘に納まった日本刀を持っていた。

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