朝焼け、まで ~映画「野獣死すべし」に捧ぐ~
ゴミ箱から出された紙切れは
いつかの どこかのコンサートチケット
クッションが少し効いたフローリング仕様の床の上
たくさんの電気コードがとぐろを巻く
スナイパーシンドロームは かつての他愛の無い夢
巻き戻しボタンと
再生ボタンと 一時停止ボタンを駆使
黒のハンチング帽子は目深にかぶる
背筋を伸ばし
瞬きは極力控え
手を前に組み
低い声で言葉少なに呟く
オペラはいらない
ミュージカルもいらない
涙も
微笑みも要らない
君も
要らない
おっと デッキシューズでの入室は断る
ここは 白濁した僕の個室
絵にならないキャスティングも遠慮してもらおう
ルーペとコンパスだけを机上
地図はきっとどこかにあるはず
洋書の本棚か
暗室のロープに吊るしてあるはず
ずぶ濡れのステンカラーコートは
もうとっくに 乾いているはず
だから
LP盤のB面の針は
随分前から
真ん中を
行ったり 来たり
カーテンは開けないよ
きっと もう 夜が明けてきている
少なくとも
この部屋よりも明るい空が
そこには
あるはずだから
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます