僕が吐いた言葉を覚えていない理由



1ドルにも満たない夜景でも

黙って見ていると

黄色や白や青の色を適当に数えながら

そのひとつひとつの灯りの主や

その存在理由をあてもなく想像しながら

その僅かな灯りたちに静かに包まれたい

と思ってしまうから不思議だ


すると

自然に 美しい過去が甦り

過ぎた時間によって磨きが掛けられて美しくなった言葉が

僕の口から吐かれて

きっと

君の喉の奥をくすぐることになるんだろう


その最中 君は

僕の言葉を全部抱きしめているかのように錯覚し

その実

僕の言葉に抱かれていることに気がつかない


当の僕はといえば

1ドルにも満たない夜景の灯りに包まれていることに気がつかずに

美しい言葉を

黄色や白や青の灯りに

投げかけ続けている


「なぜ 君はそんなきれいな色で瞬いているの?」


僕が灯りに向かって言いたいことは これだけなのに


僕から吐かれる言葉に

君はその美しい瞳を静かに閉じてしまう






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