僕は ずいぶん泳げなかった



僕は ずいぶん泳げなかった

それを 知っている人は少なかっただろう


みんなが息継ぎをしながら向こうの壁を目指して泳いでいるときに


僕は 足を下に付いて

手だけ クロールの動きをしてるだけだった



みんなが自由時間に楽しそうに泳いでいるときに


僕は 壁にもたれて

チャイムが鳴るのを待っていた




僕は 目が悪くなった

寝ながら文庫本を読んでいたからだ

いや 嘘はいけない

マンガ本を読んでいたからだ



みんなが先生の話を笑いながら聞いているときに


僕は 目を細めて

黒板の字をノートに書いてた



みんなが休み時間を友達と楽しんでいるときに


僕は 黒板の前に行って

最後の二行をノートに書き写していたんだ




僕が 初めて眼鏡をかけて学校に来たら


みんなが僕の周りに集まってうらやましがった


僕は 笑いながら

心の中で

「君たちをどんなにうらやましいか」

って思ってたんだ




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