詩繍 ～昨日のように～

惚れちゃいけないよ

自己中の女

わがままな女

自分勝手な女

冷たい女

そんな女と付き合いたい、と思う男はあまりいないだろう

が、しかし

気がつくと

いつの間にかそんな女と付き合ってしまっている

そんな男は世の中にたくさんいるだろう

容姿がタイプだからなのか

体の相性が合うからなのか

それも大きな理由であってもいいけれど

仮にそれを抜きにしても

なぜ、そんな女が魅力的に見えてしまうのか

それは

「相手よりも自分のことが好きな女だから」

と、私は思っている

それなら

自己中で、わがままで、自分勝手で冷たい女であっても説明がつくでしょ？

だけど

そんな女ほど、実は

自分を日々磨いていて

自分の良さや短所をよく知っていて

自分の短所を目立たなくする術も

自分の良さを引き立たせる術も知っていて

そして

自分をだめにしそうな場面を本能的に回避し

相手をだめにしたことを忘れてしまうことで

好きな自分を守ろうとする

徹底的に自分に磨きをかけて

本能に忠実に欲しいものを手に入れようとするその女と

ある時点のある場所で接点を持ってしまった男はいったいどうなるだろう

そんな女が多少の傷を負ってもいつか自分になびいてくれる

そんな女が自分の傷を顧みないでいつか自分に寄り添ってくれる

そんなことを夢見て

冷たい女とは真逆の優しさを唯一の手法と信じ切って接し

男が見限りそうなときにタイミングよく見せる献身的な態度も

その実、献身的な態度をとる自分自身を好きだからなのに

「ほら、やっぱり」と男は勘違いしてしまい

自分の利益よりも男の利益を優先するかどうかをいつまでも見定めようとする男が

いつまでたっても満たされないお付き合いをしてしまう男なんだろう

だから

自分のことを大好きな女に惚れちゃいけないよ

わかったかい？　橙さん