詩繍 ～昨日のように～

火曜日

７時１８分。

いつもよりも３分遅く車のエンジンをかける。

やっぱり、ラジオはなぜかＡＭ放送になっていて、

慌ててタッチパネルを操作してＦＭに変える。

いつものおもしろいＣＭが途中だったので、

こんなことに、「あ～残念」って思ってしまう。

いつもの細い路地では、

珍しく、１台の車ともすれちがわない。

あのへんてこりんなエアロボディーのエスティマともすれちがわない。

そのかわり、横の道から左折した久しぶりのFIAT PANDAの後ろについた。

「やあ、ひさしぶり！元気だったかい？」

心の中で呼び掛ける。

いつものように、きれいな青のPANDAは、

赤信号で停まると、ミラーを斜にして、マスカラの仕上げにかかる。

だけど、青信号ではロケットスタートだ。

さすが、ミス・マスカラス！

いつも、感心させられるけど、久しぶりの今日も、だ。

結局は、同じ道を２０km一緒に走ることになるんだけど、

途中で、僕は、小さな路地へ曲がり、PANDAの彼女はそのまま直進する場所がある。

僕は、大きな道に出るところで一時停止させ、

重たい車体のタコメーターを３５００近くに上げて走らせると、

コンビニの駐車場をショートカットして左から大きな道に飛び出すPANDAが前方に踊り出る。

違う車ならパッシングものだけど、相手はミス・マスカラス。

敬意を表して、PANDAのバックミラーを睨みつける。

PANDAは、一目もくれずに飲み物を口に含んでそれっきりだ。

どうってことない火曜日。

けど、今日は、ちょっと、朝から気分がいい火曜日。