生残東京〈スレイヤーズトーキョー〉

昧槻 直樹

―Day 1―

 トーキョーは今日も暑かった。バス停に並ぶ誰もがうちわや扇子をパタパタと仰ぎ、数分後に来るバスを今か今かと待っていた。

 今日は土曜日なので、普段から多い人がもっと増えている。これではバス一つに乗りきれるだろうかわからない。

 そんな気だるげな列の中に、一際怠そうにしている少女がいた。彼女は高校の制服を着て、肩から斜めに四角いバッグを提げていた。

「最悪。別に補習なんてどーでもいいじゃん」

 どうやら彼女はこれから補習に向かうようだ。スマホで友人に愚痴を送りながら、口からも愚痴が漏れる。そこにバスがやってくる。

 順番に入っていくと、少女は一番後ろの運転席側の席に座った。そして、すぐにイヤホンを耳につけて自分の世界に入った。


 しばらく走ると一段とビルが立ち並ぶエリアに入ってきた。一口に「トーキョー」と言っても、彼女が住んでいる所からすればより都心に近く、より都会のイメージに近い。窓ガラス越しに外の景色をボーっと見ていた。流れていく高層ビル群を視界の中に映しながら、文字通りその風景を流していた彼女は、他人事のように、漠然と「平和だな」と呟いた。

 学校の近くにあるバス停に着くまで、あともう少し時間があるからと、彼女は少し目をつぶって浅く座り、背もたれに寄り掛かると窓ガラスに頭を預けた。


 どれくらい経っただろうか。いや、体感的にはそれほど経ってはいないはずだったが、妙に長く寝ていた感覚がした。

 もしかしたら寝過ごしただろうかと思ってふと目を開けると、彼女の目に衝撃の光景が飛び込んだ。

 なんと、自分が乗っているバスが事故を起こして、前面が大破し、窓ガラスも粉々になって散乱していたのだ。

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