第4話 仮面舞踏会
ミカエルとフローラル、両者の思惑は一致し今2人は仮面をかぶり踊りを踊っていた。ミカエルはフローラルの貴族の娘っぷりに感心せざる得なかったし、この娘なら間違いなく、自分にふさわしい朴訥な素直な女性だと信じきることになる。
「フローラルさん、月を一緒に眺めながらあなたの子供の頃のその楽しいお祖父さんの話を聞かせてください。」
「ええ、いいわ。お爺様はいつも優しくて、即興で指人形で劇をしてくださったのよ。楽しかったわ。」
フローラルの話は本当だった。しかし、ミカエルとフローラルの認識の差はあったが、お爺様というのは貴族のお爺様のことではなく、詐欺グループの長老のことだったし、長老が指人形で子供に教えたのは、いかに大人を騙すかの指南を兼ねている人形劇であった。フローラルは孤児だった。詐欺の腕一つでここまでのし上がってきた生粋の詐欺師。それが彼女の姿だった。楽しかったのも本当で、詐欺でお金を稼ぎ苦しい生活を一歩一歩良くしていくのは生きているという充実感を彼女に与えてくれた。
「お祖父様はいつも劇で私に世界を教えてくれていた。だから、私は今のような立派な大人になることができたの。ミカエルさんにも、そんな素敵な先生のような人いらっしゃったかしら?」
「そうですね。私には残念ながらフローラルのお爺様のような楽しい祖父はおりませんでした。とても厳しく躾けられ、どちらかというと堅苦しかったです。でも、セバスは私の親友で彼がいるから、今は楽しくやっています。」
不思議なことにミカエルもフローラルも真実を語っていた。もちろん事実の認識のレベルはフローラルが優っていただろう。フローラルはミカエルがセバスと楽しく女遊びをしているのをしっかりと知っている。そして、ミカエルはフローラルのお爺様が
伝説の大詐欺師だとは知る由もない。
二人が打ち解けるのにどうして時が必要か?ミカエルの女の子を口説く技は確かだったし、フローラルの朴訥な少女を装う詐欺師としての腕は卓越していたのだから。
ミカエルとフローラルはその日、唇を重ね合う仲までに自然となる。
それは2人の計画が重なり合った当然の結果だった。
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