救済の獣

ほしくい

プロローグ

―――人はどこから来て、どこへ向かうのだろう。


そんな哲学的思考など私は持ち合わせてはいない。

非力で貧乏な旅人に過去を振り返る余裕はないし未来を羨む夢も無い。


私にあるものは空腹と飢えの恐怖と口うるさい同行者のみだ。


ただ……。ただ単細胞並みの脳ミソにその言葉が刻まれているのはどうしてか?


あぁ……。思い出した。あの箱がそんなことを話してたっけか……。


そう。幾度となく人を馬鹿にした箱が真面目な話をした時だったか。

記憶を呼び起こせば反吐のでる想い出だがどうにも思い出す。

夜の寒空に吐いた白い息を眺め私は箱に告げた。


「人はどこからも来てはいない。どこへへも行けないんだ。」


今も覚えているさ……。

その言葉を聞いた箱がさぞ嬉しそうに笑っていたことも……。

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