第92話 救出 Ⅰ


 日が暮れ辺りが真っ暗に染まった森の中、俺とあかりの二人はひっそりと話し合っていた。


「それで三人は大丈夫なのか?」


「そうだね。リンちゃんがいるから最悪な事態はないんじゃないかな」


「そうか、だったら何処かに捕まっているのが一番ありそうな線だな」


「私もそれが妥当だと思う」


「それじゃこれから助け「ちょっと待って!」」


 俺が助けに行こうと立ちあがるとあかりにすごい勢いで止められた。


「流石にさっき逃げてきたばかりなのにすぐは無理だよ。焦る気持ちは分かるけどもう少し騒動がおさまってからにしよう」


「そ、そうだな。なんだか居ても立ってもいられなくてな」


「そういえば門の前で戦っているとき急に自分は魔王だって言い出したけどあれは何だったの?」


「そうだった……」


 ソフィー達三人のことですっかり忘れていたが、元々あのとき俺が動揺した原因はこれである。

 これとは俺のステータスのことだ。

 俺はあのときいつもより体が重いと感じステータスを表示した。

 そして問題が起きたのだ、いやこの場合は起こっていたというのが正しいのか。

 これは実際に見てもらった方があかりには分かりやすいかもな。


「あかり、ちょっとこっち側に来てくれ」


「ん? そっちに行けばいいの?」


 俺はあかりを隣に呼ぶと自分のステータスをあかりにも見えるように設定し実体化させた。


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名前: カズヤ

種族: 死霊の王

職業: 魔王


Lv.1


HP : 5400/5400

MP : 3000/3000

ATK : 358

DEF : ∞(スキル補正)

MATK: 524

MDEF: 549

DEX : 532


SP : 0


スキル:『実体化』、『物理攻撃無効』、『メテオ(笑)』、『集中』、『夜目』、『解除』、『成長速度倍加』、『憑依』


称号 : 『車に轢かれちゃった系男子』、『異世界の幽霊』、『流石にあの攻撃はエグいでしょ』、『ゴブリンを殲滅せし者』、『下級竜スレイヤー』、『魔王の素質』、『虐殺の王』


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「これが俺のステータスだ」


「どれどれ……ってそういえば和哉のステータスを見るのこれが初めてかもね」


 それだと前との違いが分からないかもしれないが職業が魔王となっているのでおかしいということには気づくだろう。


 あかりは俺のステータスをざっと見ると最後に俺の顔を見た。


「これって前からそうだったの?」


「いや違う。元々、種族が幽霊で職業は冒険者だ」


「じゃあこれって……」


「さっき確認したらこうなっていたんだ」


「どうして種族とか職業が変わったりしたんだろうね」


「それは俺が聞きたいくらいだ」


「そうだよね……あ、だったらサタンさんのところに行けばいいんじゃないかな?」


「魔王のところか?」


「そうだよ。何か困ったことがあったら来てって言ってたし」


 魔王か……もしかしたら魔王ならこうなってしまった原因が分かるかもしれない。


「そうだな、一先ず魔王のところに行ってみようか」


◆◆◆◆◆◆


 森を奥へと進みもうすぐで魔国に入ろうとしているそのとき。

 俺から見て左側にある木がガサガサと音を立てる。


「ひっ!? 何かいるの?」


 あかりは怯えているようだが俺にはこの光景に見覚えがあった。


「確かついこの間も同じ場所でこんなことがあったような……」


「アウゥウ!」


 ガサガサという音が次第に大きくなり最終的に飛び出してきたのは体のあちこちが葉っぱでまみれたホワイトサンダーだった。


「そうか、なんかこの光景に見覚えがあるなと思ったらお前だったのか!」


「アウゥ」


 一方俺とは対照的にあかりはと言うとポカンとした顔で固まっていた。


「ホワイト……サンダー?」


「アウゥ!」


 あかりはしばらく俺とホワイトサンダーと音を立てていた木を順番に見ていたが、ようやく状況が掴めたのかポンと手を打った。


「なるほどね、もうビックリさせないでよ! ホワイトサンダー」


「アウゥ……」


 ホワイトサンダーにはあかりを驚かせるつもりはきっとなかっただろう。

 そのためか今のあかりの一言で気を落としてしまったようだ。


「あ、ホワイトサンダー……そういうつもりじゃなくてね。えーと、ごめんなさい!」


 お前が謝るのかよ! と言いたくなるがその気持ちはぐっと抑える。

 今は魔王のところに急がなければいけないのだ。

 これ以上ここで時間を取られたくはない。


「あかり、そろそろ行こう」


「あ、そうだね。ホワイトサンダーもおいで」


 こうして二人と一匹で森の中を歩いていき魔国領内へと入った。

 しかしここである問題が起こった。


「そういえば魔王のいるところってどこら辺だっけな」


 そう、起こった問題とは魔王の居場所が分からないというものだ。

 前回はゼガールについて行っただけなので詳しく道を覚えていない。


「この状況もしかして『探知』を使わないといけないのか……」


 『探知』を使うか否か悩んでいるとホワイトサンダーが一つ大きく吠えた。


「アウゥ!」


「ホワイトサンダー? どうかしたのか?」


 ホワイトサンダーは頭である方向を示している。


「もしかしてホワイトサンダーは道が分かるのか?」


「アウゥ!」


 ホワイトサンダーはそう一つ吠えると俺達を先導するように奥へと進む。

 魔王の居場所が分からない俺達は大人しく先導するホワイトサンダーの後をついて行った。

 そしてホワイトサンダーについて行って数分、俺達はようやく見覚えがある森の開けた場所へとたどり着く。


「確か、ここでゼガールが何か呪文を言っていたはず……」


「その必要はないんじゃよ」


 どんな呪文を言っていたのか俺が記憶を辿っている最中、何者かに突然後ろから声をかけられた。

 というかこの口調からして当てはまる人物は一人しかいない。

 俺は振り返り相手の顔を確認する。


「あんたはどうして外にいるんだ? 魔王さん」


「ほう、せっかくわしが出迎えてやったというのにどうしてとは冷たいのう。まぁとにかくついてくるがよい。お主らもわしに会いに来たんじゃろ?」


 サタンはそう言った後、呪文を唱え自らの部屋へと繋がる階段を下りていく。

 その後に俺とあかりはついて行った。

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