第十二話 砂漠の狩人
砂漠の夕方というのは、一番生き物が動く時間帯だ。夜行性と
俺とハルは砂丘の一番高い所から、ゴーグルのレンズ機能の最大距離にピントを合わせ、動くものを探す。
左手の砂丘の谷間に、サボテン群を見つける。今日の狩りは
とはいえ、スリングの射程まで距離を詰めなければならない。草食動物は耳が良く、気配にも敏感だ。あくびの背中から飛び降り、慎重に、かつ
砂丘を二つ越え、ギリギリの
急いで砂丘の反対側へとまわる。手を挙げ、合図を送ると、ハルが距離を詰めながら玉を撃ち出す。あいつ、足腰強くなったなぁ。
砂漠ガゼルはハルの玉を逃れるように
ハルの玉が脚に当たった。イケるか?
その時、右手の砂丘から、大きな影が
あくびは砂漠ガゼルの首元に喰らいつくと、ブンブンと振り回す。うわー、ガゼル、ボロぞうきんみてぇ。
正面を避けてあくびに走り寄ると、あくびはガゼルを足元に置き、鼻先でこちらに押しやるように寄越す。
まるで、イイのよ、あんたたち、まずは美味しいとこ先に食べなさい。とでも言うように、自分は口許の血を大きな舌でペロペロと舐めている。
俺は苦笑して、あくびの背中をポンポンと叩く。
「またおいしいとこ、あくびに持って行かれちまったな」
「うん、でも、あくびカッコイイ!」
ハルは日本にいる頃、確か仮面ライダーなんたらに夢中だったはずだ。よく日曜日の朝っぱら、鼻息を荒くしながらテレビにがぶり寄っていた。ーーー。ハルのカッコイイの基準もワイルドになったものだ。
あくびはどうやら俺とハルを
砂漠ガゼルの首の動脈を切り、血抜きする。ハルに、食べられそうなサボテンを
ゴリゴリと生々しい音を立て、口から脚の先をはみ出させて
こんな光景に
と、つくづく思う。ハルの
ハルが俺のスマホの、サボテンカテゴリの画像を見ながら、食べられるサボテンを探している。
「あ! フルカがあるよ。いっぱい! やったぁー!」
フルカはハルの好きなサボテンで、シャクシャクと歯ごたえが良く、ほんのり甘い。煮るとクタリと柔らかくなり、
ハルがフルカの収穫に夢中になっている間に、内臓の処理をする。膀胱と大腸は砂に埋め、他は水洗いしてタッパーに詰める。
ハルに「全部、
ハルは最近、俺と二人きりの時でも、日本語を使わない時がある。順応性の高い子供の脳は、この世界で生き残る事を優先している。
俺はといえば、中途半端なままだ。日本に戻った時の事を心配して、この世界の
ハルが布袋に入れた、たっぷりの収穫物を担いで走ってくる。砂に足を取られながらも、踏ん張って転ばない。
本当に、たくましくなったものだ。
あくびの、血で赤く染めた首元に砂をかけ、ブラシでゴシゴシ擦ってやる。あくびは目を細めてから、大きなゲップをした。
今日の狩りはこれで充分だろう。ロレンたちのところに戻って、メシにしよう。
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