02:20

‪東京タワーの下には、死体がうまっている‬。

‪あかあかとともる電飾の下には、さびしさにころされた、くろぐろとした死体がうまっている‬。

‪いきができないほど、たくさんのひとであふれたこの街では、みんな、どこか疲れて諦めていて、そんな顔で下を向いて、せかせかと早足でとおりすぎてゆく。

‪お行儀よくととのえられすぎて、無機質な街路樹は、ここいらにすむひとたちとそっくりだ‬。

‪かれらの、その能面のような皮のしたには、ぼくやきみと同じように、どくどくと脈うつ赤い血がながれ、どろりとした脂が溜まっているのだろうか‬。

‪こんな、人ごみのなかにいてもひとりぽっちの、さびしい街は、そのさびしさを悟らせまいとして、いっそうさびしくなる夜に、いっそうあかるくひかるのだろうか‬。






‪「となりの部屋にすむひとの顔となまえさえ、ぼくは知らなかった‬。

‪こんな、ぼくみたいなだれかが、だれかをころしつづけていたのかもしれない。‬」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る