第48話 郵便(2)
「ねぇ、おねえちゃん。ボク、魔法が使えるんだよ」
宝くんが自慢気に胸を張る。
お!
こないだ言ってたヤツね!
郵便屋さんが来てくれるんだっけ?
「魔法? すごい! どんな魔法が使えるの?」
「郵便屋さんを喚べるんだよ!」
「すごいすごい! 郵便屋さんって、どんな人なの?」
「うんとね~。頭がピカピカしてるの」
頭がピカピカ?
えっと……。
スキンヘッドってことかしら?
「あとはね~、緑色なの」
緑色!?
全身緑色の人物を想像する。
人間じゃないわね……。
頭から触角が二本飛び出ているイメージが浮かんだわ。
「おねえちゃん。ほら、郵便屋さんだよ」
「えっ!?」
そこには、真っ赤な下地に緑を所々に散らしたつなぎ服と、お揃いのニット帽を被った中年のおじさんがいた。
帽子のてっぺんでは、林檎のような赤い玉がピカピカと光っている。
え!?
音も立てずにどっから入ってきたの!?
こわっ!
ん? あれ?
この人、面接の時に、本社ビルのエレベーターであったおじさんだ!
頭ピカピカ。
全身緑色。
まあ、間違ってはいないかな……。
沈黙する私におじさんの声が届く。
頭の中に直接響くようなその声は、不思議なことを言った。
「貴女にお届け物あるよー。多すぎるから、あなたの部屋に全部置いてきたある。友達がよろしくって言ってたあるよ」
お届け物?
私に?
友達?
誰のことかしら?
さっぱりわからない。
「あ、ありがとうございます……」
「また何かあればワタシに頼むとイイあるよ」
「は、はあ。よろしくお願いします」
「じゃあ、またあるよー」
「郵便屋さん、じゃあね~!」
宝くんが両手を頭の上に広げて、身体全体でバイバイをする。
そんな宝くんに対して郵便屋さんが振り向く。にっこりと微笑むと、黙って窓から出ていった。
◇
楽しい時間は、あっという間に過ぎる。
夕方になり、「そろそろおにいちゃんが帰ってくるかも」との宝くんの声に従い、私は自室に戻ってきた。
「なんでお前が弟の部屋にいるんだ!」なんて怒られるのは、真っ平ごめんよ。
あ~、楽しかった~!
念願の宝くんの部屋にも入れたし。
また、近いうちにきっと行くわ!
さてさて。
郵便屋さん、私の部屋に荷物を届けたって言ってたけど。
何が届いているんだろう?
部屋の鍵を開け、ドアを引く。
少し埃っぽい。
どこかで嗅いだことのある懐かしい匂いがした。
「な、な、なによこれ~!?」
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