第24話 幕間-4


「どうすんのさ、天? 彼女ものスゴく怒ってたよ」

「……」

「このままだと、彼女、斬首間違いなしだよ」

「……」

「僕が心養殿へ彼女を連れていった時、彼女は無実なんじゃないかって言ったのは、天だよ」

「……これ以上、俺にどうしろってんだ」


 天が不貞腐ふてくされたように床にしゃがみこむ。

 あ~あ。

 もう、世話が焼けるなぁ。


「追いかけなよ」

「今からか?」

「追いかけて謝れば、彼女も分かってくれるよ」

「ちょっと待て、少武シャオウ。なんで俺がアイツに謝らないといけないんだ?」

「だって、天帝様が謝ると思うかい?」

「いや。あのオヤジは、自分が明らかに間違っていたとしても、誰かに謝ることは絶対にない」

「だろう。ほら、天、キミが謝るしかないじゃないか! ほらっ、早く、行った行った」


 天が、まだ完全には納得のいかない顔で、渋々立ち上がる。

 ドアを開け、部屋を出ようとしたところでふと立ち止まった。


「少武、お前は行かないのか?」

「行った方がいいかい?」

「……ふんっ、好きにしろ!」


 ドアをバタンと閉めて行ってしまう。


 フフッ。

 素直じゃないなぁ。

 じゃあ僕は、ここでティータイムにしようかな。

 天の部屋の机と椅子を借りる。

 本棚から本を一冊拝借し、持参した紅茶をティーカップに注いだ。


  ◇


 ――ティーカップが空になった。


 さて、そろそろ二人で話をしている頃かな?

 天は、ちゃんと謝れたかな?

 ステータスを見せてもらえたかな?


 悪戦苦闘する友の姿を想像していたときだった。


 ドタドタと床を踏む音が聞こえた。

 どうやら天が戻ってきたらしい。

 ずいぶんと早いご帰還だな。

 徐々に近づいてくるその音が、ドアの前でピタリと止まる。

 さて、どうなったのか……。


 ……ん?

 ドアのすぐ前まで来たと思ったのは僕の気のせいだったか。

 ドアの開く気配がない。

 おや? と思った矢先、僕を呼ぶ天の声が響いた。


「おいっ! 少武、いるのか? いるなら、ドアを開けてくれ」


 おやおや。

 なんだというんだい、天。

 ドアくらい自分で開けておくれよ。


 椅子から立ち上がり、ドアを開ける。

 と、そこには、ぐったりとした御堂河内みどこうちさんを両手で抱える天の姿があった。

 思わず手で顔を覆う。


 ……なんでそうなっているんだい?

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