レネキス結晶
幕間四 舞い降りた最悪
地下奥深くにある薄暗い通路には、多くの足音が反響していた。
(この世界は存在している価値などない。か……)
セリス・ハルルは流れに
この世には
普通に産まれ、育ち、過ごし、そしていつの日か死ぬ。ただそれだけの望みですら
不公平――これは
だからこそ人は、自分なりの生き方を見つけ、人生を
望む未来が
今現在、セリスと一緒に歩いている者達にしろ、この先にいる者達にしろ、全員が勝手に世界を
(本当に、
レヴァース王国の
ただ、そういった者達の気持ちがまるでわからないわけでもない。さすがに世界の滅亡まで望みはしないが、セリスも不公平に関しては人並みに不満を持っている。
だから本来、こうした〝
それで心が満たされるのであれば、
(世を
薄暗い通路を抜けた先には大きな広場があった。奥のほうには巨大な二体の石像が立ち、前にある
ここは
努力が実を結び、セリスの地位は高い。それでも教団の本部どころか、教皇の姿を実際に目にすることさえ許されなかった。だが、事態は
今回、
禁忌の悪魔とは
セリスの任務はビアガネルス教団を
しかし光の聖女
すでに現在地は王国側へと通達し終えている。ラスティア教団を筆頭に構成された各国の部隊が、もう間もなく投入される
セリスのこれからの任務は踏み込んでくる部隊と
教皇の
教皇はゆっくりと立ち上がる。振る舞いや雰囲気が妙な
「
しわがれた声で、教皇ルクスはしばらく
天井にある
セリスは、教皇の言葉の一つ一つを胸に
「では、本題に入ろうか。すでに
教皇にはっきりと断言され、周囲がざわつき始めた。
百年に一度だけ姿を現す、
そこに禁忌の悪魔は光の聖女なのだと明確に記されていたのだから、疑う
(まあ、これに関しても気持ちはわからなくはないが……)
この情報を
教皇は片手を胸の前に
「光の聖女を祭り上げたとして、
教皇とまで
脳に
「悪神様の
教皇の言葉を
教皇の側近達が素早く戦闘の態勢を整え、同時に教皇を
背に
(単身……だと? いったいどこの国の部隊員だ)
「ふわぁあああ……」
白髪の青年は大きく背伸びをしながら、
「な、何者だ、
教皇の側近である男が
混族である白髪の青年は
「ここが悪神様の……っ!」
剣を向けていた男の頭部が
側近の男の首から
「静まれぃ!」
最上位である教皇が
セリスは
「ご
「おお、ああ……? リーヴァイ。
白髪の青年は自身の人差し指を口に
セリスは信じられない想いを
白髪の青年は切り離したほうの指を、頭部が消えた男の首へとねじ込んだ。死体は
液状の何かは男の全身を
赤黒い液状が
白髪の青年の〝
(
セリスは、まるで
悪神は
生み出した邪鬼を玉座の前に移動させ、足置き扱いしている。
「
「はっ……」
教皇は
「これまで、何人の光の聖女が人の手で
「私の知る限りでは、六人でございます」
「六人か……では、さほど時は流れていないのか」
「いいえ。悪神様の時代から、約四千年は
「そうか、四千年か。そうか、そうか」
悪神はすっと立ち上がり、両手を大きく横に広げた。
「
つかの間の沈黙を
悪神はそっと手をかざし、場を収める。
「それで、
「残念ながら、正確な
悪神は腕を組み、天を見上げる。
「ああ、やはり霧の摩天楼が
「これは、あくまでも予想の
教皇は顔を上げ、自身の目を指差した。
「
「真紅の瞳を持つ黒髪の青年、か……
「噂ではございますが、闇の精霊王から寵愛を
悪神の
「……精霊そのものに? この時代に生きる者は、そんなことが可能となったのか」
「いいえ。私自身、耳を疑う話でございました。悪神様いかがいたしましょう?」
「
「はっ。かしこまりました」
しばしの沈黙を
「それはそうとだ。この
「塵……ですか?」
教皇は不思議そうな顔をした。セリスの
悪神が教団員側へ体を向き直り、両手を腰に置いて数歩だけ進んだ。
「やれやれ、
セリスは血が逆流する感覚に、身が
瞬間――悪神は姿を消した。
「外の
悪神の声が背後から飛んできた。瞬間移動のごとき素早さで後ろに立たれた。
セリスは瞬時に
悪神の顔には、人とは思えない
「
「――っ!」
セリスは心底から震え上がり、声にならない声をあげる。
その日を
セリスを含む諜報員から、教団と各国への通達は完全に
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