通学路の秘密②
いつも秘密について考えている帰り道の通学路。今日は別の問題が脳内を徘徊している。
東條さんは本当に大きな爆弾を投下していった。とてつもなく難しい問題を、俺に突きつけてきた。それはじいちゃんの秘密に匹敵するのかもしれない。
家に帰った俺は荷物を自室に置いた後、台所に向かった。冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぎ、喉を潤す。ひんやりと冷えた麦茶は、全ての悩みを洗い流してくれる気がした。
「大輔、帰ってたんだね」
「姉貴こそ、塾じゃないのかよ」
コップを置き、声のする方に視線を移した。
「塾は夜から。今日は始業式で早く終わったから、一度家に帰っただけよ」
歩み寄ってきた姉貴は、空になった俺のコップに麦茶を注ぐとそのまま飲み干す。その行動に普段は何とも思わないのに、今日の俺は何故か見惚れていた。
「何照れてるのよ。顔真っ赤よ」
「う、うるさい」
姉貴を見てられず、自ら視線を逸らした。
「もしかして、好きな子でもできたんじゃないの?」
「で、できてないよ」
東條さんの顔が浮かび上がる。姉貴にいじられるのは何度目だろう。新一もこんな気持ちを抱いているのかもしれないと思うと、少し悪いことをしたなと反省したくなる。
「ふーん。そう」
コップをシンクに置いた姉貴は、そのまま台所から出て行く。
「あのさ、聞きたいことがあるんだ」
「何よ。女の子の落し方でも聞きたいの?」
「ち、違うから」
「それじゃ、何よ」
腕を組み、俺を挑発するように姉貴が眺めてきた。一つ年が違うだけでこんなにも雰囲気が変わるものなのかと思ってしまう。
「じいちゃんのことなんだけど……本当に何も知らないの?」
じいちゃんの言っていた秘密について、以前から何度も姉貴に聞いていた。姉貴もじいちゃんのお見舞いに行っていたのだから、何か聞いているんじゃないか。もしかしたら、俺と同じことを言われていたんじゃないか。
でも、姉貴は決まって同じことを言う。
「じいちゃんが残した言葉なんて、私は知らないから」
「本当に何も聞いてないの?」
「……聞いてない」
そう言い残した姉貴は、自室に戻っていった。
会話がなくなったことで訪れた静寂が、なんだかとても気持ち悪い。
俺は姉貴の言葉を疑わずにはいられなかった。
じいちゃんのことを聞こうとすると、直ぐに会話を終わらせようとする。
明らかに何かを隠しているのが手に取るようにわかる。
どうして隠すのだろう。
もっとしつこく聞けば教えてくれるかもしれない。
そう思いながらも、受験生の姉貴を邪魔しちゃ悪いという気持ちが喉に蓋をしていた。
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