19話 「ピュアはピュアでも差があります」

 早速食べ始めると多分話すスピードが落ちてしまうと思われるので、早速この話の流れで条件を聞いていくことにした。

 「で、その条件を一つ一つ教えていただけますかね? 神崎さん?」

 「はい、そこです」

 「え?」

 「まずは今佐々木君が言ったセリフの中に含まれることについての条件ですね」

 俺が神崎さんに対して今言った言葉についての条件??? 何か失礼なことを無意識でやっているだろうか。もう最近奈月との距離感がおかしくて、自然と女性に失礼な言動をしているとしたら、ここはびしっとはっきり言ってくれたら俺も反省できるのだが……。

 「そ、その……ですね。私のことを名字にさんをつけて呼ばれるのはその……なんかとても距離感があるような気がして……」

 「ああ、なるほど」

 確かに神崎さんには丁寧に呼んでいたからな。奈月とは話が違う。あいつに関しては名字どころかそれまで”お前”か”あいつ”か”こいつ”ってしか呼んでなかったからね。女子が一番イラっと来る奴ー。そりゃモテねぇわ。もともとモテるとか言う前に相手にすらされてなかったけれども。

 「気にし無くていいので、下の名前で呼んでくれませんか?」

 「全然それは構わないけれども……。じゃあ、夏帆って呼べばいいのかな? 俺の事は佐々木君のままでいくの?」

 「そのことなんですけど……健斗君って呼んでもいいですか?」

 何だこの子は……。大学生にもなって異性の名前下で呼ぶ呼ばれるだけですごく顔を赤くしていらっしゃる。俺とは違ったちゃんとした素敵なピュアですやんけ……。

 この子のピュアがダイアモンドだとしたら俺のピュアは何ですか? あ、そんな汚いものを見る目しないでくださいよ。

 「全然構わないよ。君つけなくてもいいし。あと名前だけじゃなくて話すときもタメでよくない? いっつも敬語だし」

 「くせなんですよねー、これ。そのうち慣れてきたら変わると思います」

 「そかそか。じゃあ、一つ目の条件はそんな感じでいいのかな?」

 「はいっ」

 可愛らしい元気なお返事、とってもいいな。どっかの誰かさん常に「ぐえー」とか「うげー」とかそんな低音のきったねえ声しか出してないからこんな声聞くと元気出ますね。

 「じゃあ、二つ目です!」

 「おお……。どんと来い!」

 夏帆の最初のあの表情からすれば、この後に提示される条件はもっとすごいものだろう。果たして応えることが出来るだろうか。

 「私といっぱいメッセージアプリでお話しさせてください!」

 「……?」

 「ダメ……ですか?」

 あれ? 俺って先週夏帆と連絡先交換したよな? っていうか今日こうして集まったのもメッセージアプリを通してだったよな?

 「え? 全然構わないけど……」

 「いいんですか!?」

 逆になぜだめだと思っていたんだ……。何のために交換したのか意味がなくなるではないか夏帆氏よ……。

 「ダメだと思っていたの?」

 「そ、その……彼氏でもない人にプライベートな時間まで入っていってお話しするということは非常に迷惑なことなのかと……」

 「そんなこと全然ないよ? 普通に日常話しかける感覚と同じように話しかけてくれたらそれでいいと思うけど」

 「そ、そうなんですね……」

 「もしかして……男の人と連絡先交換したの初めてだったりする?」

 「そ、そうです……。高校時代は女子高だったので、男の人と関わることなんてありませんでした。大学に入ってから知らない男の人に声をかけられたりとかはしましたけどもさすがに交換なんてしませんからね」

 夏帆は想像以上にちゃんとガードが堅い。意外とこういう感じの女子高卒業だったり、箱入り娘で育てられてきた女の子って男に耐性が無かったりするのだが、夏帆の場合は変な男に声をかけられても実習の時のようにうまくかわしてきているようだ。親御さんも安心だろうな。

 え? 変な男に現在進行形で引っかかっているとか言ったやつ表出ろ。俺はピュアだから夏帆に影響はない。あ、今の言葉で笑ったやつももれなく表出ろ。童貞の気持ちの悪い話3時間聞かせて精神的に潰してやろう。

 「す、すいません……。こんな異性との関わり方も知らないぎこちない女なんかめんどくさいですよね、ごめんなさい」

 「いやいや! そんなことないよ」

 だって俺もほとんど関わったことがないもん。高校どころか中学校の頃から死んどったでとは言うのは止めた。絶対にいたたまれない空気になる。

 「夏帆の暇なときに何でも聞きたいこと、話したいことをメッセージで送ってくれたらいいよ。特に何も気にせず気軽にね」

 「は、はい……! ……やったっ」

 夏帆さん、めっちゃ嬉しそう。

 「他に条件はなんでしょうかね? 夏帆さん?」

 これで二つの条件は俺でも容易に守ることの出来そうな内容だった。はたして三つ目以降はどんな内容が____

 「こちらからは以上ですっ」

 「え?」

 「この二つを健斗君にお願いしたら許してくれるかなって……」

 「お、おう。全然構わない。その条件ちゃんと守れるよ」

 「ではでは、健斗君のお願いは今日の講義の小テストに対する対策ですねっ。ふふふ、ちゃんと私のお願いを聞いてくれるようなのであとで小テスト対策としてまとめたポイントをメッセージアプリで送らせていただきますね」

 「おお」

 夏帆は早速メッセージアプリを利用して、色々と俺に情報提供をしてくれるようである。これなら奈月とも情報共有をしやすく、非常に助かる。

 せっかくメッセージアプリを使って彼女は教えてくれるとのことなので、そこから何かお話に繋げられたらいいかもしれない。もしかするとそれも夏帆の狙いかもしれないしな。

 「じゃあ、そういうことでいこう。夏帆」

 「はい、健斗君」

 ちょうど話がまとまったところで頼んだものが運ばれてきたので、その後はゆっくりと話をしながら昼食を楽しんだ。

 しかしまぁ、なんで女の子のピュアと言うものはこんなにも尊くて可愛らしいのだろうか。逆になぜ男のピュアは気持ち悪くなってしまうのだろうか。

 このテーマでぜひとも卒業論文を誰かに書いてほしいものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る