人間さんと3人のコビト

ZEN

第1話 Prologue

 ザーザーと雨が辺り一帯を飲み込む夜、もう住んでいない鳥の巣箱の中から、ガサゴソと物音がしていた。


「雨が止むまでここを借りるとするか……少々手狭てぜまだな」


 巣箱に入り込むと、インクはため息をきながら自身が背負っていたバックパックを部屋の隅に置いた。雨で濡れたバックパックはいつもより重く感じる。


「せまいのだ〜!」

「ちょっと!暴れないでよー!」


 巣箱に入り込んだ瞬間、走るようなスペースも無いくせに走り出そうとするスカーにすかさずプリムが声をかける。プリムに注意されると、スカーはピタッと動きを止め、まるで従順な犬のように大人しくなった。


「この巣箱、空き家なのかなぁ?」


 雨音が徐々に強く巣箱の外から響く中、プリムが雨で冷えた身体をさすりながら周りを見渡すが、周りは真っ暗であまり何も見えない。月明かりがあるとよかったのだが、あいにくこの日は雨なのだ。


「あちこちホコリが溜まっているし空き家だろう、まぁ外より雨は防げるからいいだろう……今日はここに泊まろう」


 そう言うとインクはバックパックから布切れを出し広げ、二人を隣同士に座らせると、少し雑にバサっと被せる。とても薄い布だが、三人には十分な大きさの布だ。無いよりはマシだと言わんばかりに三人は身を寄せ合い、布にくるまる。


 ザーザーと大きな音を立てていた雨音が小雨になる頃、三人は深い眠りへと就いていた。

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