第15話 爬虫類・恐竜・鳥類♀▲
「アードさんっ、よくやったっ!! もう大丈夫っ……今止血するからっ!!」
私はバックパックからタオル(ロビーの棚から拝借したものだ)を取り出し、なるべく清潔そうなものをアードウルフの腹部の切り裂かれた傷口にあてがう。
バスタオルを折りたたんで帯状にして縛って固定しようとするが……うまく結べない。手が思うように動かないので驚く……。先ほどのセルリアンの攻撃から抜け出そうとした時に、左手がひどく負傷していた。
目の前の左手の状態は……まるで、手首ではなく、「
掌は、骨の間に何本も鉄釘を打ち込んで、そのまま乱暴に上下に動かして裂いたかのように、肉の部分がほとんど切り裂かれている。左手からはぽたぽたと、
皮膚の圧力から解放された筋肉が――ゼリー状の鮮やかなピンク色の肉塊が、丸々と盛り上がっている。痛みは無い……というか、前腕から先の感覚がほとんど麻痺していて、それで今まで気が付かなかった……。
「くそっ……左手が……。すまないけど、マナティーさん、
「う、うん……! わかったの、マナにおまかせなの! こ、こうでいいかしら?」
「ありがとう! 血が止まるように、この傷口のところを手で押さえていてください! レイヨウさん達も!」
「おうっ! りょうかいですっ!」
「こ、この白いのを押さえておけばいいのか?」
アマゾンマナティー、シタツンガ、ウォーターバックの3人にアードウルフの止血を指示する。
そして滑りやすいタイルの上ではほとんど戦えないカラカルとキリンには、彼女たちを
武器は右手のナイフしかないが……近寄ってくるセルリアンは私が
「い……いたたた……わ、わたしもかっこよく戦いたかったけど……これじゃ、かっこ悪いなぁ……」
「しゃべっちゃダメなの! アードウルフちゃん……って言ったっけ……。アードちゃん大活躍だったから、もう休んでていいのよ! あとは、マナたちが守るのっ!」
「あなた、こんなに軽い……細い身体で、セルリアンに立ち向かうなんて……かっこいいじゃないですか!」
「やるじゃん! すっげぇ根性あるじゃんかお前!」
そばにいるカラカルだが、私のケガのほうを心配している。
「ちょ、ちょっとハナコ! その
「心配しないで、カラカル……。これくらいの
バックパックの奥から、ヒロラの道具箱から交換してもらったガラクタのひとつ――ワニさんホチキスを取り出し、パチンパチンと左手の傷口に
可能なら消毒液か熱湯で針を消毒しておきたかったが、今は貧血や失血死を防ぐのが第一……。
「わっ……ワニから歯が抜けて刺さったぁっ!! 傷をふさぐヒトのどうぐかぁコレっ!」
「私それ、パチパチして遊ぶおもちゃかと思ってたわ!」
カラカルとキリンがすっかり驚いてる。
……衣服やバックパックなどの修復用に……とキープしていた道具だが、こんな使い方をするとはね……。
もちろんこれは
私たちが負傷者の手当てをしている一方では、アフリカニシキヘビとナイルワニの「爬虫類コンビ」と、ホオジロカンムリヅルとヘビクイワシの「鳥類コンビ」がセルリアン達を食い止めるため、ずっと交戦を続けてくれている。
「おうおう、おめーらケガは大丈夫かよ? まあオレがついてりゃあこんなセルリアンなんか――」と、振り向いて話しかけてくるアフリカニシキヘビ。
「ニ、ニシキヘビさん!! それよりも後ろぉッ!!」
半人半蛇型セルリアンの一体が、アフリカニシキヘビの身体に大蛇のような触手を巻き付ける! プロレスラーのクラッチよりも強力な……
「むむむ!
「そ、そんなのんきなコト言ってる場合ですかぁっ!!」
セルリアンの触手が巻き付いて、彼女の両肩関節は完全に固められている! これではどんなに柔軟であっても、締め付けから逃げられない!
……!! と、思いきや! なんとニシキヘビはいともたやすく自ら肩関節を外して、触手の締め技から楽々と脱出する!!
「っっしゃぁァ~~っ!!」
それどころか脱出から攻撃に転じて、脱臼した両腕をムチのように振り回して、セルリアンの頭部に打撃を連発しているではないか!?
そ、その動きは、まるで蛇の飛び掛かり!! セルリアンの方も頭部をかばうが、そのガードを回り込むように……ヘビの蛇行するような軌道で……後頭部に連続して拳を叩き込まれる!!
「っそぉいっ!!」
遠心力で肩関節をはめ直すニシキヘビ!! 彼女の両腕の可動域はまるで……獲物を喰らう際に、自由自在に動いて外れる「ヘビの
頭部への連撃を喰らい、さすがに体勢を崩して背面を見せるセルリアン……ニシキヘビはその好機を見逃さない! ……セルリアンの触手を掴み、背後から馬乗りになって太腿で首を挟むと……その肩車のような体勢から……前転! 両脚で首から引き倒して、倒れた敵の片腕の肘関節を極めるこのワザは……!!
「ビクトル式
「な、なんだそりゃあ……早口言葉か? ……オレのつかう技は、もちろんヘビの技だけどぉ?」と、技をかけながら、ニシキヘビはけげんな表情をしている。
や、やはり……野生の申し子である彼女らは、人間の武道やスポーツなど一切知らないらしい……。
半人半蛇の
さらに、大蛇のように腕に絡みついたニシキヘビの両脚は、セルリアンの胸ともう片腕の上に置かれ、怪物の抵抗を無力化している!!
「おらァっッ……!! っしゃぁあぁーっ!!」
「グァあァッ……エアあぁあァッ……!!」
セルリアンの
うめき声のような、あるいは単に両脚で胸を押さえられているせいか……機械的なノイズを口腔から漏らすセルリアン!!
彼女らはヒトの武術格闘技を知らない……。にもかかわらず、ヒトが二十万年とんで二千年かけて培い、
これはまさにフレンズと人間との「収斂進化」に他ならないっ!!
そして!
「がぶりっ!! セルリアンとワニの
わき腹を狙って触手の斬撃を放つセルリアン! この鋭い中段蹴りのような触手を、ナイルワニは……ワニの
ヒトで言う所の極真空手蹴り足挟み受けっ!!
「だぁぁ~~っっ!!」
そのままヒジとヒザで掴んだ触手を、ドラゴンスクリュー風に……だが超柔軟な体幹で、自分が宙返りする回転の勢いで投げ飛ばすナイルワニ!!
「おお~ッ! 挟んで即投げ……まるでワニのツイスト! 名付けてコレ! クロコダイル・スク――」
「お主、なんでも名付けるのが好きなのか……? それはともかく、あの爬虫類のフレンズ……見た目とか振る舞いとか、なんか高貴っていうか……やんごとない感じじゃないか? そう思わんか?」
なぜか
「え? なぜ今そんな話を……? まあナイルワニって、諸説あるけど……エジプトという昔の国では、神さまの使いとして……王様や貴族みたいに扱われたっていう――」
「ええええ!! あ、あの子本物の貴族なのっ!? わたしと違って!? きゃあ~っ、かっこいいなぁ!! わたし、本物なんて……初めてみたよぉ!! おーらっていうかなぁ……雰囲気がすごいなァ~……」
カ、カンムリヅルさん、あなた……ふだんはキャラ作ってて……素の喋りはそんなんだったのか……。かわいいなオイ……。
「よーし! わたしもがんばるぞっ――じゃなくて……余も頑張るのであるっ! 余は、本物の貴族に目前に手、恥ずかしくない戦いを見せねばのう!!」
一方その頃、もう
「キッッシャアァァァァ~~ッ!!」と叫ぶヘビクイワシ!
カンフー映画のような……まさに怪鳥音と呼ぶに相応しい、奇ッ怪な掛け声をあげて、セルリアンの頭部に左ハイキックを繰り出すヘビクイワシ!
柔軟な股関節により、頭に足を落とすような蹴り技……人間の格闘技で言う所の「ブラジリアンキック」!
胴部を中心にして、上半身が円を描くように回転し、タイルに叩きつけられるセルリアン!
「ヘビクイワシさんッ!!
彼女の背面から襲い掛かるもう一体のセルリアン!
それに対して、振り向きざまに回し蹴りを放つヘビクイワシ!
ああ! ダメだッ……おそらく偶然だが、セルリアンの腹から飛び出した触手が、頭の側面でからまって……これでは触手で蹴りを
っ!! い、いや……!! こ、このワザは!?
ヘビクイワシの蹴り脚は、通常の回し蹴りとは逆の軌道を描いて……!? 持ち上げた脚を内側から回すように……外へ向かうカカト蹴りでセルリアン触手のガードを頭から弾き飛ばし……無防備になった頭部へ目にも止まらぬ回し蹴りを放つ
伝統派空手において「内回し蹴り」や「掛け蹴り」と呼ばれる技法だ!! それを実戦的にしている……なんという柔軟性と脚力ぅ!!
「ヘビクイワシさん……なんというすごい足捌きぃっ!?」
私がそばに寄り添ってきたヘビクイワシに話しかけると、目を輝かせて厳しい目つきをしていた彼女は、一転して照れくさそうな表情を浮かべた。
「え、えへへぇ……♪ わたくし、そんなに褒められると照れますねぇ……♪ うふふぅ、もっと褒めてくださァい……ってぇ!? ハナコ先生ェっ! そっ、そんなっ、大怪我ぁっ!!」
「ん? ああこの左手……動脈はやられてないし、こうして止血したから……」
「あああっ……ひどいっ!! ひどいぃっ!! なんて……なんという……!! ハナコ先生の大事な手っ……!!」
私の負傷した手を見て、まるで自分のことのように悲痛な叫びをあげるヘビクイワシ。
そして涙まじりの声で、喉の奥から絞るように、再び話し始める。
「ヒ、ヒトの手ってのは、わたくし……ずっと憧れてた……! 柔らかくて、器用で……ものを作ったり……もじを書いたり……誰かの手を握ったり……とっても大事な……! 大事なっ!」
「へ、ヘビクイワシさん、お、落ち着いて下さい! このくらいのケガなら私は別に――」
「……くっそぅッ! 絶対許さないッッ!!」
まるで自分の身体が傷つけられたかのように……いや、それ以上に
そこへ、足元を打ち払うように襲い掛かるセルリアンの触手! ヘビクイワシはこれを片脚を上げて
「ッッキェァァ~~ッッ!!」
セルリアンの触手の口吻を、タイルを割らん勢いの……体重を乗せた高速カカト落としで迎撃ッ……ま、まるで「ヘビ捕獲棒」でヘビの首根っこを押さえるようにだっ……!
ヘ、ヘビクイワシさんっ!!
激情にかられるままに攻撃を……!
いや、野生の本能のほうは冷静だ……!
触手の先端を、あのようにカカトでしっかり押さえたままで、敵の有効な攻撃手段を無力化した上で……ローキックの応酬だぁ~~ッ!!
セルリアンの体重の乗っているため
さすがにタフなセルリアンでも、あのローの速射砲には耐えきれずに、倒れて起き上がれないっ!
「キェイィイェェ~~ッッ!!」
さらにダメ押しの一撃!
ヘビクイワシは浴槽のへりにサッと飛び乗ると……まるで、地雷が爆発するような……鉈を打ち込まれた太い竹が鋭く弾けるような……渾身の下段後ろ回し蹴りがセルリアンの頭部にッ!!
鳥類フレンズならではの、視点を変える発想とでも言うべきか! ローをハイに! つまり、安定した体勢での押し込む威力の下段蹴りで……頭部を足とタイルで挟み込む、強烈な一撃が炸裂だッ!!
彼女の動きは、空手やムエタイのテクニカルな蹴り技……いや、まるで中国拳法の技術のようだ……!
安定して立てる草原地帯の多い中国北部に伝わる拳法では、蹴り技が発達し……河川が多く船上で戦うことが多い中国南部では手技の格闘技術が発達したと聞いたことがあるが……。
人間ならば、安定したスタンスを取れるマットや板の間の上でしか使えないような、高度な蹴り技を……このような滑りやすい濡れたタイルの上で、自由自在に繰り出すとは! まさに鳥類の強靭な脚力と優れたバランス感覚のなせる、彼女らの「フレンズの
「よくもハナコ先生の……ヒトの大事な手を喰ったなァッ!! セルリアン蛇めっ!!
泣いて……泣きながら攻撃を……。
あ、あなたがた……フレンズって
そこへ! もう一体のセルリアンの触手攻撃が迫る!
「ヘビクイワシさん危ないッ!!」
だが!
「其の方、頭を冷やすのじゃなっ! ……さいわい水ならたっぷりあるからのっ!」
ヘビクイワシの援護に入る……ホオジロカンムリヅルだ!
両手での打撃!
「いいぞっ、やっちゃえカンムリヅルさん! これぞツルの技だっ!」
「うむ! それに余にはフレンズの技もあるぞっ!」
左手で触手を掴みながら……右手で自分の蹴り脚の靴のカカトを掴んで、放し……ハイキックを放つ!!
蹴りのタイミングをずらしてのフェイント、かつ腕で足を掴んでの弾性力の反動を威力に加える……伝統派空手の「裾掴み蹴り」ではないか!?
もちろんこれは手が自由に使える「フレンズならではの技」だっ!!
「そりゃあっッ!!」
さらに追撃! カンムリヅルと蛇人セルリアンとの、この超密着状態――ボクシングで言うところのクリンチの距離から……どう動く!?
ハイキックで後頭部を狙うか……? いや、ハイキックはリスキーであるから、逆にバックステップからのローキックか……? しかし、離れてしまうと
カンムリヅルは……そのどちらでもなく!
密着体勢から、モデル体型の長い脚を大きく曲げて、足裏でセルリアンの後頭部を蹴りつける!!
サソリの尾の毒針が刺すように、脚を丸く曲げて蹴る姿から、この一連の動きは伝統派空手では「サソリ蹴り」と称される。ヒト程度の脚力と柔軟性では、たんなる奇襲技にすぎないこの技も……鳥類フレンズの脚力とバランス感覚、体幹の強さと重心移動の巧みさ……そして原始的なツルゆえに、他種のツルと違い後ろ爪が発達しているカンムリヅルが使えば……脳幹に
「ッケエェェンッッ!!」
ツルのひと声を上げて、体勢を崩して前のめりになったセルリアンの背中を後ろ蹴りで押し飛ばす……。その吹っ飛ばされた先にいるヘビクイワシは……!!
「キィッシャァーーッ!!」
得意のローキックでこれを攻撃!!
しかも回し蹴りではなく、けもののヘビクイワシが使う、押し蹴りの動きで、ピンポイントの
「クエエェェッッ!!」
さらに
「おお、其の方は確か、ヘビクイワシと申したかな……? べんきょう好きの『先生』がいると聞いたことがあるが……なかなかやるのう。『じだいげきの先生』みたいじゃな」
「ふふふ、貴女も……。体じゅう傷ついて……ハナコ先生や他のフレンズを守って、闘ってくれていたんですね……。ああ、血まみれで、こんなに汚くなって……高い所でえらそうにしている姿より、全然カッコイイですよ……」
背中合わせになって、セルリアンの攻撃に備えるヘビクイワシとカンムリヅル。
刮目せよ! フレンズ達の
ホントすげぇ!
「カンムリヅルさん……!! 貴女の足技はまさに……青い目のSAMURAI……!!」
故・アンディフグに負けないですよ貴女……。
「なんじゃそりゃ? 余のことはもっとこう、殿様とか大名とか……お代官様とか呼んでくれ!」
最後のそれ、悪役っすよ。
「ヘビクイワシさん……いえ、蹴り技の
「ええ~っ♪ や、やですねぇ……わたくし……そんな……お勉強じゃなくて、キックの先生だなんて……は、恥ずかしいですので、キックちゃんとかでどうでしょう……?」
美しくて強くてかわいいとか……尊すぎかよ!
「くっそぉ~っ! みんな強いわねぇ~!」
「私だって……ヒヅメさえつけられれば、このマフラーで戦えるのに!」
背後でそうぼやくカラカルとキリン。
「ヘビ、ワニ、ワシ、ツル……あの子たちは、まさに『爬虫類軍団』!」
「え? ハナコ、『はちゅうるい』って……ヘビとワニがそうなのは知ってるけど……。でもヘビクイワシとカンムリヅルは鳥でしょ?」と、疑問を口にするカラカル。
「イヤ、ところが鳥ってのは恐竜という爬虫類の子孫……っていうか、むしろ恐竜そのものなワケで、つまり鳥綱は、爬虫綱・恐竜上目・竜盤目・獣脚亜目に属していて……この分類の不一致は、リンネ方式の分類と進化的繋がりは異なっているという理由で――」
「お、おう……全然わからん。ヒトって話がわからん上に、長いのよね~……」
「要するに、みんなきょうりゅうみたく強いってコトでしょ!! もっとろんりてきに話す練習をしなさい、ハナコ!」
キリンに話をまとめられてしまった。
まあ確かに、言いたかったイメージはそんな感じだけどね……。
「そ、そんなことよりさっ! アードさんのお腹のケガのほうは……!?」
「ハナコさん、それなんですけど、ホレっ! 見て下さいっ!」
なんと、ケガした当の本人はすっかり元気そうで……お腹を見せてもらったが、わき腹の傷口がほとんど治癒しているのだ!!
ど、どういうことだ!?
さきほど何体ものセルリアンに喰いつかれ、腹部に大きなケガを負ったはずのアードウルフだが……その腹の傷は、皮膚を少し
「あ! そこケガしてるわよ!」
「ほんとだ! お腹の下に裂け目が!」
カラカルとキリンが、アードウルフの下腹部を指し示して言う……。
……い、いや……アンタら、そこは……。
「そ、それはケガと違う……その割れ目は、元から……」
「え、そうなんですか? ハナコさん? 今まで毛皮を取ったことなかったから……。なんかこの割れ目は、中に穴がいくつか……」
「ああぁ~! いいよっ! わざわざ見せなくていいからぁっ!!」
「おお! どうやらそれは、お風呂のサンドスターのおかげのようじゃな!」
と、わちゃわちゃとしている我々に話しかけるカンムリヅル。
な……なるほど、ここの温泉はただの温泉ではなく、虹色に輝くサンドスター温泉――我々、フレンズの生命の源となる不思議な鉱物――そのお湯に浸かって安静にしていたアードウルフは、サンドスターの恩恵を受けて超人的な回復を見せたというワケか……!
フレンズのカラダってすげぇ!
「これなら……あのセルリアンども、すごくタフでなかなか倒せなくて、私たちも膠着状態……今まで逃げ出せなかったけど……。この『回復温泉』でアードさんも回復したし、フレンズの『爬虫類パワー』で攻め続けて、突破口を見つけてここから脱出を――」
「って、言いたいのはやまやまだろうケドさ、ハナコ……ちょっと、セルリアンの様子を見てみて……」
と、カラカルが不安そうに言う。
なんだ一体? セルリアンの様子だって……?
あいつら、ヘビクイワシさん達と一体ずつ闘っているけど……。
……って、えええ!?
いつのまにか数が増えてるぞッオイッ!!
1、2、3、4、5、6……!!
い、入り口付近から新たな蛇人型セルリアンが……新たなセルリアンの増援が、のろのろ、ぞろぞろとやってきているではないか!?
「シタツンガさん! ウォーーターバックさん! ど、どういうことですっ!? セルリアンは四体だけのハズじゃあ……!?」
両名にそう尋ねると、ふたりはキョトンとした顔でこう答えた。
「えー? わたしたちはそんなコト言ってないです。セルリアンがたくさん追っかけてくる、って言ったと思います」
「そうそう、たくさんだな」
「ぐ、具体的に数を言いますと……?」
「ぐたいてき? ええぇ~っと……たしか、セルリアンの数は……前の両足のヒヅメの数と、同じくらいの数がいたかなぁ……? どうだったっけ、ウォーターバックちゃん?」
「そうそう、あたしもそう思う。ヒヅメと同じ数……つまりシタツンガもあたしも『ぐうているい』だから、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……四匹!」
「違いますよ~。それは、けものだった時の話でしょ~? 今のわたしたちの前足だからぁ~……ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ……あ、『いつつより多い』と、わかんないや!」
「つまり、やっぱり、たくさんだな!」
「そうそう、たくさんですね!」
あ、頭痛くなってきた……。
このふたりのレイヨウの会話の内容というよりも、十体相当の蛇遣いセルリアンが存在していて、続々到着中という事実に……。
私と同じような心境なのだろうか……頭をかかえた様子のヘビクイワシ……。
「あぁ~……! 博士のおっしゃる通り、フレンズには『ぎむきょういく』が必要ですっ! ……こーゆー時のために、サバンナのフレンズは『さんすう』を習っておく必要を……今ごろになって、痛感してますぅ~!」
ホントその通りっすね、ヘビクイワシさん……。
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