夢か思うたら夢やった

サキタマ

Act 1...?

「はい、今日の稽古終わりー!」

今回の座長、芽衣さんの声が稽古場(というには狭い市民館の一部屋)に響いた。

団員7人。汗を肩のタオルで拭いながら、台本やら小道具やらを自分達の鞄にそれぞれ仕舞う。

「中橋くんさ、どう?最近のコレ。」

と芽衣さんはニヤつきを顔に浮かべて、パソコンキーボードを打つ動作をする。さっきまでの演技とは別人の様に。

そう。俺は小説を書いている。と言っても、ネットで誰でも投稿できるので暇つぶし位にしか思っていないのだが。

「...まあ、それほど...」

少し無愛想に思うかも知れないが、これが普段の俺だ。

「ふぅ〜ん。じゃあ、駅まで一緒に行こ?」

何がじゃあなのか全く分からないが、こうして芽衣さんに言われると断るという選択肢は頭に浮かばない。このバリ寒い時期に、自分より一回りも上な男と街を歩くとはやはり掴めない人だ。


駅に着き、帰る方面の違いから芽衣さんが「また明日」と言って背を向けたのは約一時間前。

今は学園モノの恋愛小説を書いていて、関西から来た転校生の男子が主人公だ。転校初日に学校を案内されたヒロインとの両片想いの物語。こ

この作品は割と長いこと書いていて、あと少し書き終えれば卒業編を執筆する。卒業編のあとに続編を書く予定は無いので、完結は近いと気合いが入る。



...あかん、めっちゃ眠い...

冬の寒さを凌ぐために肩からブランケットを掛け、程よく温まった牛乳を体に流し込んでいたためか、瞼が下がり手が動かなくなる。

ノートパソコンの横から出るファンの風が心地よく、机に頭を預けて瞳を閉じる。

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夢か思うたら夢やった サキタマ @tubura8012

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