哀れ秋風よ

冷門 風之助 

プロローグ

 俺の名は乾宗十郎(いぬい・そうじゅうろう)、職業は私立探偵だ。テレビドラマや映画での探偵のイメージっていやあ、

①『金がない』

②『拳銃は持てない』

③『女にもてない』

④『酒呑み』

⑤『警察と仲が悪い』

と、まあ、こんなところだろう。

 俺の場合、

『ほぼ正解』が①と③、

『正解』が④と⑤、

当たっていないのが②、

といったところだろうか?

俺が今住んでいる『日本』では、私立探偵も国家公安委員会の試験にパスしさえすれば、仕事上に限って拳銃の所持、携帯、使用が認められている。

後は、警戒棒(俗にいう特殊警棒)の所持も可である。

何でここまでなったか?

諸々の理由があるにはあるが、まあ、分かりやすく言えば、

『それだけ日本の治安が悪くなったから』とだけにしておこう。

だからその分やれる仕事も幅が広くなった。

時には逮捕だって可能だし、警察の許可があれば、取り調べに立ち会うことだって可能だ。

探偵の免許を受けるには幾つかの方法がある。

まず一つ目として、警察官、麻薬取締官等、司法警察員か、特別司法警察員の職を五年以上勤めた者、

これだと国家試験は受ける必要はなく、単に登録をするだけでおしまいだ。

二つ目は、国から認可を受けた私立探偵社で七年以上探偵としての実務を経験した者、である。

俺の場合は後者の方になる。

元々は陸上自衛隊の隊員で、18歳で入隊し、32歳まで勤務していた。

その後、思うところあって退職し、知り合いの伝手である大手探偵社に入社、七年間経験を積んだのち、国家試験を受けて独立したというわけだ。

勿論、免許を持っていなくたって、探偵業は出来なくはない。しかしそれだと当然出来る仕事が限られてくるから、何者にも縛られずに自由に生きてゆくためには、どうしたってこちらの方がいいし、何といっても仕事の幅も広がる。

俺は年齢・・・・いや、詳しく言うのは止しておこう。

まあ、五十間近だと思ってくれ。

顔立ちは細面で、背は170センチちょっとくらい。

体重は62か3といったところかな?

骨細だが、筋肉質の体型。

視力は裸眼で両目とも2.0だ。

だが、目つきが鋭くみられるため、仕事の時にはいつも眼鏡をかけている。

学歴?

そんなことまで聞くのか・・・・やれやれ、まあいいや。

一応地方の高校までは卒業したよ。

性格は・・・・そうだな。

妥協するのは嫌い。

必要以上に慣れ合うのも嫌だが、友情やその他仕事上必要な付き合いは、割に大切にする方だ。

格闘技?

ケンカ?

拳銃の腕前?

まあ時には荒っぽいこともしなきゃならんので、決してやれないわけじゃないし、ましてや自衛隊にいたんだ。そこそこはいける。だが、自慢話になるんでね。

自慢話はもっと爺さんになって、縁側でお茶を飲むようになってからでも出来るさ。

煙草は喫わない。昔は喫ってたんだが、何時の頃からか止めちまって、それっきりさ。

ギャンブルもやらない。というより、

『面白いと思わない』から、手を出さないんだ。

どうやら博打の女神様には好かれていないらしい。

その代わり、酒は呑む。呑むときはそれこそ、

『ウワバミも裸足で逃げ出す』ってやつさ。

 ただ、酔っぱらったことはあまりないな。顔が少し赤くなる程度だ。

趣味・・・・趣味ねぇ?

一体なんだろ?

ああ、そうだ。

『風呂に入ること』くらいかな?

 毎朝起き抜けに一時間は入る。

 当然寝る前にも入る。

 運転免許は・・・・自衛隊にいたから、大型二輪、大型四輪、普通自動車は持っているよ。

 勿論必要な時はハンドルを握ることもあるが、正直言ってあまり得意なほうじゃないから、余程のことがないと、自分では運転しないんだ。

 特に夜中に高速道路を走ることは、何よりも苦手だな。

 一度降り口を間違えて朝まで首都高を二周ほどしてから、それ以来一般道しか走らない。

 ええ?

『タフな私立探偵が妙に憶病だな』って?

 臆病さも探偵の資質の一つさ。俺はそう思っている。

 好きな食べ物?

 ああ、生もの以外なら何でも食べる。

 それから仕事中はなるべく冷たい飲み物は飲まないようにしてる。

 もうそろそろいいだろ?

 タレントのインタビューじゃあるまいし、無駄話は止しにして、そろそろ本題にはいろうじゃないか。

 

 

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る