ダンスマラソン

第13話 《ダンスマラソン》-1 エメロード

「ダンスマラソンですって!?」


「そんなうろたえないでよ!」


「うろたえますよ! んな、エメロード様が参加されるなんて!」


「当たり前じゃない。主催者の一人なんですもの。私が出ないわけにはいかないじゃない!」


「主催なら持久力コンテストなんて企画しなきゃよかったじゃないですか。三十超えた中年に、《持久力》という名の壁がどれほど辛いか」


「私の企画じゃないっ! 楽団をお貸しくださったフィーンバッシュ侯爵閣下に聞いてよ!」


 冷ややかにアーバンクルスとルーリィの視線を受ける一徹。が、気付くどころではないほどに、参加せざるを得ない状況を嘆いていた。


「で、ではエメロード様、若くて立派そうな殿方を引っ張ってまいります。ゲームはその方と……」


「若くて立派そうな殿方を、私のパートナーにげ替えて貴方が不参加になったら、まるで私が、疲れて仕様もないこの企画に引きずり込んだように思われるじゃない!」


「いやぁ、引きずり込まれたって言うなら私も……」


「一徹っ!!」


「……ハイ」


 ダンスの動き一つが慣れない動き。全く息の合わないエメロードとのダンスカップルで参加したなら、想像以上に疲れそうなのは簡単に予測できてしまう。

 それでもこのゲームの参加は不可避、と理解した一徹は、トホホとうなだれた。


「あ、じゃあ……」


「適当にギブアップしようなんて考えてたら絶対に許さないわ。もしそれで、『情けない公爵令嬢だ』なんて周囲から思われたら私、たまらないんだから」


「……息は全然合わないのに、なかなかどうしてこのは、こういうとき俺の考えをピタリと当ててくる」 


 10歳以上離れていることもある。本来は、大人としての一面だって見せなければならないところ。

 我侭な発言をしてみて、しかして眉間に皺を寄せた十八の美少女から叱責を受けたことで、面倒くささと情けなさを突きつけられた一徹は、結局溜息混じりに音楽の調べに乗るようにして、またステップを踏み始めた。

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