第4話 電気キター!!

 うちの地域の送電が復旧したのは、7日の夜でした。

 だいたい40時間ほど停電してたことになります。

 市内でも最後のほうで、国道と病院などの重要施設周辺は、6日夜に復旧してました。


 停電中は、当然夜は真っ暗。ただぼーっとしててもつまんないので、外に出て夜空を眺めたりしてました。

 いやあ、星がすんごくキレイだったあ。

 普段見えない等級の星や、星雲、流れ星が見えました。


 ああ、こんな星の海のなかで、とてもちっぽけなワタクシ。

 宇宙は広く深いのね。

 何光年も離れたあの星の輝きは(以下略)


 7日夜に懐中電灯とロウソクをつけて焼肉を食べながら

(つうか肉ばっかり)


「今夜も停電だったら、明日はヤバイね」

「お風呂、お義母さんとこで借りようか」


 なんて話してました。

 冷蔵庫の中身も腐り始め、冷凍室は手前から解け始めてました。

 極力開けずにいたんだけどなあ。

 ストックしてたキノコ類やフルーツ、野菜は液状化し、魚は怪しく油ぎっている。もったいない~美味しい鮭だったのに。

 無事なのは奥底に入れてるアイスノンや板状の大きな保冷剤(これは常備品)に囲まれてた、鹿肉のカタマリ。

 またカタマリ肉かよ!

 ってツッコミは無しでお願いします。


 冷蔵庫の食材が食べられなくなったら、食事は米と缶詰め、レトルトとカップ麺になります。

 物流は止まったままで再開の知らせはまだない、このまま停電してたら、家族四人であと何日食い繋げるだろう。


 肉をガツガツ食い終わって、家人たちが死にかけのマグロ化する姿を見ながら考えていたとき、唐突に「カチッ」という音が響いて、家中の照明が点灯しました。


 うおー!

 電気キター!!


 全員声を上げました。

 立ち上がって拍手です。

 何のスタンディングオベーションだよ(笑)


 感動しました。

 そして、普段自分がいかに贅沢な暮らしをしていたのか、今さらながら実感しました。

 もう、明るいうちに急いで晩御飯作らなくていいんだ。

 もう、毎回お鍋でご飯炊かなくていいんだ。

 もう、必死に洗濯ものを手洗いしなくていいんだ。


 そしてもう、あの美しい星空は見えないんだ。


 急激に戻ってきた日常が、逆に非日常にも思えました。

 何でしょうね、この感覚。


 とりいそぎ冷蔵庫を掃除し、生ゴミと化した食材を捨てました。


 停電との戦いは終わり、明日からは別な戦いが始まります。まずは温かいお風呂に入って、少しずつ日常を取り戻そう。


 まだ余震は続いています。

 電気が復旧したから安心、というわけじゃない。いつ大きなヤツが来るかもしれない。

 物流が滞るなか、次に来たら、もっと大変になるだろう。

 そのときどうする? 

 どうしたらいい?


 そんなことを考えながら、お湯につかってました。

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