黄土の村にて 新しく出会った黄土の執念と久しぶりに出会った赤の成長
広場に満ちていた緊張感がだいぶ薄れてきたな。やっぱり高位の魔獣二体や
…………何だろ? リンリー達に近づいていくほど足の進みが遅くなる。何か変な事が待ち受けてるのかな? …………仮にそれが正しいとして、その原因はたぶんあの
やっと近くで見れた。絶対に逃がさない‼︎ という強烈な思いを表すように
「えっ⁉︎」
「そんなに避けられたのが意外?」
「諦めない‼︎」
「イリュキン、久しぶり」
「久しぶりだね、ヤート君。君は、あれだけの魔法を使わないといけない状況に、それでもこうして再会を喜べて何よりだよ」
「みんなや植物達が力を貸してくれたからね」
「そうか、……その時にその場に居れなかった自分に腹が立つな」
「気にしなく、て良い。イーリリスさんに、も言ったけど、できる範囲で協力、してくれるだけで嬉しいよ」
「ヤート君が、それで良いならそうする。でも、いつでも何でも頼んでくれて構わないから」
「うん、覚え、ておく」
僕の言葉を途切れ途切れになっているのは、
「…………どきなさい‼︎」
「フン……」
なぜなら赤のクトーが僕に飛びかかろうとした
「クトー、警告よ。私の邪魔をするなら、ただじゃ済まさないわ‼︎」
「は、退かせるものなら退かせてみろよ」
「……後悔しなさい‼︎ 土よ‼︎」
「しばらくしたら助けて解いてあげるわ。それまでそこに……」
「フンッ‼︎」
小山の中からクトーのこもった声が聞こえると同時にバコンッという破壊音が起き、小山の上部が壊れてクトーの上半身が露出する。
「……オラッ‼︎」
続いてクトーは右手拳を自分の肩ぐらいまで上げた後に振り下して小山の残りの部分を壊した。土の拘束から脱したクトーは身体に着いた土をはたきながら
「この程度で、どうやったら後悔できるんだ?」
「クッ……」
「とりあえず俺もこいつに用があるから、お前は下がってろ」
僕の方にクトーが振り向いた。久々に見たその顔はキリッとしていて目に力がある。
「…………久しぶりだな」
「交流会以来だから、そうだね。それで僕に何か用?」
「あの時と同じだ。お前に決闘を申し込みたい」
「なんで?」
「あの時の無様な自分を超えるためと、お前に俺がどれだけ成長したのか示すためだ。お前に決闘を受ける意味や得はないが受けてほしい」
……へえ、本当に前とは違うな。前は自分が一番っていうのを体現するために騒ぎを起こしてたり無駄に力んで空回りしてたのに、今のクトーは言葉は静かだし精神的な軸ができていて落ち着いている感じだ。
「決闘を受けるのは良いんだけど、それって今すぐ?」
「……お前は、そういう奴だったな」
なぜかクトーは楽しそうな、懐かしそうな感じで小さく笑った。…………ここまでで笑うところってあったっけ?
「飯を食べた後の落ち着いた時で頼む」
「わかった。もう一つ良い?」
「ああ」
「後々尾を引きそうだから後ろの子と、ちゃんと話し合って」
僕からするとクトー越しに
「あいつは気しなくて良い」
「そんなわけないでしょっ‼︎」
「うそ……」
「おい、チムサ、負けた奴は大人しく順番守れ。お前は俺の後だ」
「は⁉︎ 私のどこが負けてるっていうのよ⁉︎」
「自信満々に発動させた土の拘束は、俺にまったく効いてなかっただろ? あと俺への打撃もな」
「それは……」
「わかったら下がってろ‼︎」
「キャア‼︎」
「投げる必要あったの?」
「この場だと俺の方が先だっていう宣言みたいなものだ」
「そういう事なら意味があると言える……のかな?」
「とにかくだ‼︎ あー、ヤートって呼んで良いか?」
「好きに呼んでくれて良いよ」
「助かる。俺の事も好きに呼んでくれ。今日、ヤートへの用件は勝った俺が最優先だ」
「うん、朝食を食べてからね」
「待ってください」
「私も待ってほしいね」
僕とクトーの間で話が確定しようとしたら、二人の声が止めてくる。声の主は言うまでもなくイリュキンとリンリーだった。
「リンリー、イリュキン、どうかした? あ、二人ともおはよう」
「ヤート君、おはようございます。私はクトー君に用があります」
「ヤート君、おはよう。私もリンリーと同じだよ。クトー、聞き捨てならない事を言ってくれるね」
「あ? どういう意味だ?」
「今日のヤート君への用件は勝った君が最優先という事だよ」
「そうですね。まだ私達に勝ってもいないのに的外れな事を言わないでほしいですね」
「……良いぞ。文句があるならかかってこい」
「絶対に譲りません‼︎」
「今日のヤート君への優先権は渡さない‼︎」
「えっと……僕の意思は?」
僕のつぶやきは戦い始めた三人には届かなかった。…………この置いていかれる感じは久しぶりだな。まあ、クトーの変化や他にも考えたい事があるしちょうど良いか。僕は戦っている三人から離れて他の人のところへあいさつに向かった。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
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