青の村への旅にて 到着とあいさつ
今僕達は大河沿いから少し離れた場所にある丘を越えているところだけど、空気が水気を含んで涼しくなってきた。今回の旅の目的地が近いみたいで、イリュキンの言葉もそれを示している。
「ヤート君、ラカムタ殿、ガル、マイネ、リンリー、ここを超えたら
イリュキンの言った通り丘を越えたら一気に視界が開けて、事前に湖って言われなければ海だと勘違いしそうな巨大な湖が視界一面に拡がった。
この
「ヤート君、我ら青が住む
「想像してたよりも、ずっとずっと大きくて広い。前に説明されたのを今実感できた」
「その気持ちは、よくわかるよ。私も
「そうだね……」
ラカムタさん達や三体も
「さて、それじゃあ行こう。ここまで来れば、あそこに小さく見える青の村まで真っ直ぐ行くだけだよ」
イリュキンの指差す方を見ると
もう青の村は目の前だ。向こうも僕達を見つけたみたいで村の中から大勢の青の竜人達が出てきた。その様子を見てイリュキンから喜んでる感じが伝わってくる。
「ヤート君達への出迎えだ。タキタ、あれを見ると私は任せられた役目をやり遂げたんだって達成感が湧いてくるよ。……少し早いかな?」
「そんな事はありません。胸の内は自由ですから感じた思いは噛み締めておくべきです。とはいえ、最後の報告をした後に堂々と噛み締めた方が良いでしょう」
「うん、そうだね。いこう」
イリュキンが一回うなずいた後に、そう言ってタキタさんといっしょに僕達の少し前へ出た。それを見て集まっている青の竜人達が左右に分かれて道を作ったら、奥から大人の男性と女性の老竜人が一人ずつ進み出てくる。
お互いに残り数歩くらいまで近づくと、イリュキンとタキタさんの後ろに
「
「役目の遂行ご苦労であった。客人達の紹介を頼む」
男の老竜人が言うと僕達の前に整列していた
「ヤート殿から前へどうぞ。ラカムタ殿や他の方々はヤート殿の後ろに」
「わかった。それじゃあ後で呼ぶから、それまでここにいてね」
「ガア」
「ブオ」
「ワカリマシタ」
三体に言った後に
「チッ、ヤートの事をジロジロ見てんじゃねえぞ」
「本当よね。捻り潰したくなるわ」
「……お前ら場をわきまえろ。後で説教だ」
兄さんと姉さんが、ものすごく小さい声でボソボソ文句を言っている。
「はじめまして僕は黒のヤーウェルト、周りのみんなからはヤートって呼ばれています。この度は青の村へと招待していただきありがとうございます」
僕がお礼を言って頭を下げたら目の前の二人が驚いてるのを感じた。赤のイギギさんにあいさつした時もこんな感じだったけど、僕のあいさつって変なのかな? 僕が自分の言動を思い返していると男の老竜人の方から返答があった。
「丁寧なあいさつ、誠にありがたい。黒では良き教えを子らに授けているようだ。わしは青の
「私は当代
ハインネルフさんは年を重ねた渋い声で、イーリリスさんは歌ってるみたいな綺麗な声で歓迎してくれた。僕のあいさつは変じゃなかったみたいで良かった。その後は順々にラカムタさんから始まってリンリーまのであいさつが終わり、僕はハインネルフさんとイーリリスさんに聞いた。
「ハインネルフさん、イーリリスさん、三体を紹介したいので呼んできて良いですか?」
僕が言うと一気に青の緊張感が高まった。特にハインネルフさんとイーリリスさんの近くにいる人達が厳しい顔になり、すぐに二人の前に出ようとしたけどハインネルフさんが右手を上げて動きを止めた。
「イリュキンからヤート殿と魔獣達の関係は聞いている。ぜひ紹介してほしい。それとヤート殿」
「何ですか?」
「イリュキンと話す時のような素の話し方でかまわない」
「私にも素の話し方をしてほしいわ」
……新しく会う人に言われるけど、やっぱり僕の敬語って変なのかな?
「僕の敬語って変?」
「いやいや、そんな事はない。なあ、イーリ?」
「そうね。私達はあなたともっと砕けた関係になりたいの。だから気にしないで。それよりあそこにいるのがヤート殿と仲の良い魔獣達ね?」
「そう、とりあえず呼んでくる」
僕がラカムタさん達の間を抜けて三体のところに行って青に紹介する事を言ったら、三体がうなずいてくれた。僕もうなずき返してハインネルフさんとイーリリスさんのところへ歩き出すと、三体は僕の後ろに横一列並んでついてきてくれる。
「この三体が僕とよく散歩してる魔獣達だよ。僕の後ろにいるのが
「……やはり、間近で見ると思わず後退りしたくなるほどの存在感だな」
「始めに言っておくけど三体は村の中には入らないから安心して」
「……そうしてもらえるなら助かるわ。黒の村ではどうしてたのかしら?」
「黒の村でも門の前までは来るけど村の中には入ってないよ。あと
「三体……ふむ、二体の食料という事だな。乱獲しないなら大丈夫だ。むしろ狩猟を推奨している水生魔獣がいるから、あとで教えよう」
「助かる。ありがとう」
「青にも利があるから気にする必要はない。さて、顔合わせはこんなものだな。これ以上の親睦はお互いにゆっくり深めていくとしよう」
ハインネルフさんが言うと周りの青がうなずく。なんとか無事にあいさつが終わって良かった。三体に関しては僕やラカムタさん達が自然に接しているのを見て青に慣れてもらうしかないから気にしない事にする。青の村か……、楽しめれば良いな。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
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