王城にて 修羅場?と解放作業
「「…………」」
なんかリンリーとお姫様が変だ。ピリピリしてるし目が笑ってない。あと二人から炎というか熱気が出てる気がする。
「二人とも、どうかした?」
「なんでもないですよ。ヤート君、手伝う事ありますか?」
「それじゃあこの薬草で、この人達の目が覚めた時に飲んでもらう薬草茶の準備してほしい」
「わかりました」
「あのヤート様、私も何かお手伝いできる事ありませんか?」
「お姫様は何ができる? 治癒の魔法が使えたり薬草の知識があったりする?」
「……いえ、そういう専門的な技術や知識は、私には無いです」
「そうなると今この場だと、手伝ってもらいたい事は無いかな」
「……そうですか」
お姫様なのに治療現場で働こうとするのはすごいと思うけど、本来お姫様が力を発揮できるのは現場じゃないと思う。
「だから、この人達が治った後をお願い」
「それは……?」
「この人達は操られてたって言うのは確実だけど、それでも王族を襲ったんだから無罪放免ってわけにはいかないよね?」
「そうですね。多少は何らかの刑罰があると思います」
「できるだけ刑罰は軽くしてほしいし、刑罰が終わった後も生活できるようにしてほしい」
「わかりました。お父様にお願いしてみます。……あの」
「何?」
「次に会う時までにヤート様を手伝える何かを習得しておきます」
「そう? ……わかった」
「はい、それではお父様に話をしてきますので失礼します」
お姫様が王様のところに行こうとした途中で、作業しているリンリーに近づいていく。そしてそれに気づいたリンリーが作業を止めて立ち上がる。お姫様とリンリーがお互いの息を感じれるぐらいまで近づくと二人とも動かなくなった。……にらみ合ってる? 少しして何事もなかったようにお姫様は離れていってリンリーは作業に戻った。なんだったんだろう?
「リンリー、何か話してたの?」
「何でもないです!!」
お姫様がリルさんと一緒に離れていくのを見送った後に、リンリーに聞いてみても教えてくれなかった。リンリーとお姫様は特にケンカしてるわけじゃないけど、なんか張り合ってる感じだったな。僕が二人にピリピリするような事があったか考えていると、姉さんが近づいてきた。
「リンリーはともかく、お姫様がああいう感じになるのは意外ね」
「姉さん、僕なんか変な事した?」
「なんでそう思ったの?」
「なんとなく僕が原因かなって……」
「そうね。ヤートが原因と言えば原因だけど、リンリーとお姫様の問題だからヤートが気にする事じゃないわ」
「そう……なの?」
「ええ、ヤートはヤートらしくしてれば良いわ」
「よくわからないけど、わかった」
なんでリンリーとお姫様がピリピリしているのかも、姉さんが何を言いたいのかも、よくわからないから目の前の治療に意識を集中する。……よし、骨接ぎは終わった。これで後は、この人達が目が覚めるのを待つだけなんだけど首輪はどうしよう。勝手に外して良いのかな? ちょっと確認してこよう。
「姉さん、リンリー、サムゼンさんのところに行ってくるから、この人達の事を見てて」
「わかったわ」
「わかりました」
「うん、じゃあちょっと離れる」
リンリーにこの人達を任せて僕はサムゼンさんを探す。今の中庭にはかなり人数がいるから、見つけるのは大変かなって思ったらサムゼンさんの指示を出す大声が聞こえてすぐに場所がわかった。
「サムゼンさん」
「おお!! ヤート殿、どうした?」
「一つ聞きたい事があるんだけど、あの人達の首輪は外して良い?」
「それは……少し待ってもらえるだろうか」
「理由を聞いても?」
「王族が襲撃されるような重要な事件の場合、あらゆる事を一度王の判断に委ねる必要があるのだ」
「ケガの治療は終わってるし、首輪がある状態でも命の危険はもう無いからわかった」
「それでは王のもとに行こう。おい、この場は任せるぞ」
「「「「はっ!!」」」」
ラカムタさんと一緒に王様のところに行くと、リルさんの怒鳴り声が響いていた。どうやらハザランへの尋問をしているみたいだね。ラカムタさんに王様に宰相さんにリルさんに……他の人は知らないけど勢揃いって感じだ。
「貴様!!!! これ以上私を甘く見ているなら、こちらにも考えがあるぞ!!!!」
「おやおや、余裕がないですね。僕は身体の自由も魔力も封じられてるというのに、何をそんなに怯えているのやら」
「私が怯えているだと!!!!」
「リル殿、落ち着かぬか。王の御前であるぞ」
「…………申し訳ありません」
「良い。……どうあっても黒幕は言えぬか?」
「ええ、私にはあなた方に教える事は何もありませんよ。バーゲル王」
「そうか……」
「バーゲル王、ヤート殿をお連れしました」
雰囲気は悪いけど確認は大事だから、ためらわず聞く。
「王様に一つ聞きたい事があるんだけど良い?」
「申してみよ」
「ハザランに操られてた人達の首輪を外して良い?」
「出来るだけ早く外した方が良いのはわかってはいるが、果たして大丈夫だろうか?」
「ああ、正式な方法以外で外した時に何か罠があるかもしれないって事? それなら心配ないよ」
「ヤート、なんでそう思うんだ?」
「ちょっと前に
「それならば私から頼む。あのもの達の首輪を外してやってくれ。そして娘からもヤート殿の考えは聞いている。彼らの刑罰の軽減やその後の生活は保証しよう」
「その言葉を聞けて安心した」
僕と王様が今後の事について話していたらハザランがため息をついた。
「はあ、計画の実行日に君に出会ったのが僕の最大の不運だよ」
「……それとハザランから情報を聞き出したいなら協力できるけど?」
「ヤート、赤い袋の中身を使うつもりならダメだ」
「ダメ?」
「許さん」
「わかった。それじゃあ向こうで首輪を外してる」
「何かあったらすぐ呼ぶんだぞ」
「うん」
やる事が決まったから最後まで一気にやりきろう。
「ラカムタ殿、赤い袋というのはヤート殿の腰の小袋の事だろうか? あの赤い小袋には何が入っているんだ?」
「
「……あの赤い袋の中身はそれほど危険なのか?」
「使い方によっては確実に国が丸ごと滅ぶだろうな。そんな植物をこいつ一人に使ってみろ。こいつは間違いなく色んな意味で壊れるぞ」
王様の許可をもらって戻ると何人かはすでに目が覚めていた。さすがに身体が頑丈で回復力も並みじゃない種族は違うね。リンリーと一緒に目が覚めた人達に薬草茶を飲ます。その時に身体の調子や気分について聞いてみたけど、目に生気が無いし誰も答えてくれなかった。同調があるから別に問題は無いとはいえ、なんと言うか前世の病気のせいで生きる事を諦めた自分を見てるみたいでイヤだな。
「さてと、それじゃあ首輪を外すか」
僕がつぶやくと今まで無反応だった人が、バッと僕の方に振り向いた。
「……外せるのか?」
「外せるけど?」
「無理だろ。俺達が散々力づくで試してもダメだったんだ。それを
獣人の一人が僕の事を言った途端に、リンリーといつの間にか僕の後ろにいた兄さんと姉さんから爆発的に魔力が放たれる。
「てめえら、殺すぞ」
「「…………」」
「三人とも落ち着いて、実際に首輪を外してみれば良いだけなのになんで三人が切れるの? というか、さっさと外すからね。
「ぐわあああああ!!!!」
「うわぁ、よせ!! 離れろ!!」
「ぬぉぉぉぉ!!!!」
…………まあ、この人達が大声で叫べるくらいに回復してるって確認できたから良いか。あとで謝ろう。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
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