王城への旅にて 周りの思いと本人の妙な決意
「これが王都で、あれが王城……」
「面白いね」
「ヤート、何が面白いんだ?」
「この王都の見た目が面白い」
「見た目?」
「そう、見た目。王都には一番外側の外壁以外に、王都の中に樹の年輪みたいな三つの環状壁があるでしょ。僕の考えが合ってればだけど、これは元々の王都は一番内側の小さい円の内側のみで、人が集まる内に壁の外まであふれたから、二つ目の外壁ができる。その「人があふれてはその外側に外壁を築く」を三回繰り返したのが、僕らが今見てる王都だと思う」
ラカムタさんが僕の言う事を聞いて感心したようにうなずく。
「なるほどな。
「そうだね……、王城に近いほど生活に余裕がある人が住んでて最外壁に近いほどその逆って感じかな。あと方角で言うと王城の北側にいる人達の生活が一番苦しそう」
「なんでそう思う?」
「単純に建物の見た目。王都の北端の建物が一番ボロい。たぶん貧民街かな」
「ヤート殿の言う通りだ。王城の正門がある南側が何事も優先的になり、その逆である北側が後回しにされた結果、王城付近はそうでもないが王都の南北で貧富の格差ができている」
サムぜんさんの説明を聞いて僕は気になった事を聞いてみた。
「ちなみにサムゼンさん達の家は、どの辺り?」
「騎士の住む場所は配属される場所によるが、我らのような王城勤務の騎士は王城敷地内の寮に部屋を持っている」
「……あそこの人達は、なんで貧民街に居続けるのかしら?」
「姉さん、あの貧民街にいる人達は、別にいたくてあそこにいるわけじゃないと思うよ」
「そうなの?」
「たぶん、仕事を持てなかったり何かしらの理由で仕事を失ったりとかいろんな事で、貧民街に流れていってそこから出て行けなくなったんじゃないかな。……ところでさ、兄さん、姉さん」
「ヤート、どうした?」
「歩きにくいから、そろそろ離してくれない?」
「ダメだ」
「ダメよ」
「ダメです」
今の僕は兄さんと姉さんと三人で手をつないで横に並び歩いてる。なんでか
「僕が
僕が
「……ヤートが無警戒だから俺達が代わりに警戒してるんだ」
「それにヤートを一人にすると、どんな無茶をするかわからないから私とガルとリンリーがそばにいる事にしたのよ」
「ヤート君は、無防備過ぎます」
「……ちゃんと警戒してたから
「ヤート、それだったら俺達を呼べ。それとお前が無茶じゃないと思ってる事は、だいたい無茶な事だと自覚しろ」
「我らは姫様の恩人であるヤート殿の護衛を任されてた。それにも関わらず、肝心な時に気づけぬ我らなど…………意味が無い」
「ガアァ」
「ブオォ」
みんなが真剣な目で僕を見てくる。
「みんなが僕の事を大事に思ってくれて言ってるのはわかってるけど、僕もみんなの事は大事だから、いろいろ考えて変に騒ぎを大きくする良いかなって思ったから僕だけで対処したんだ。
「それが無茶な事だと自覚しろって」
「そういえば
「暗殺者の方が正常な反応っていうのはどうなんだ?」
「別に
「「「「「「「「はぁ…………」」」」」」」」
あっ、なんか久々だけど、みんなにため息つかれた。そんなに変かな? まあ、みんなから見て変だから怒られてるのか。よし、次があったら誰にもバレないようにしよう。そうしたらみんなにも心配かけない。……という事は、工芸を習った方が良いはず。うん、そうしよう。僕が一人で自分の考えに納得していると、ラカムタさんが険しい顔で話しかけてきた。
「ヤート、お前何か変な事考えてないか?」
「変な事は考えてない。ただ、これから工芸を習おうって思ってさ」
「……ヤート君、何がどうして工芸を習おうってなったんですか?」
「要はみんなから見て僕の行動が危なっかしくて心配だから怒ってるんだよね?」
「そうだな。それで?」
「今までの事を考えたら、
「つまり?」
「僕の魔法は生物の傷や病気は治せるけど壊れたものは直せないから、元通りにするなら手作業になる。本格的に工芸品が作れるくらいになって大体の物は自力で直せるようになれば、何かあってもものを修理してみんなに何かあった事がバレないから心配させないですむ。だから工芸を習おうって考えた。良い考えでしょ?」
あれ? 僕が自分の考えを言ったら、みんなが額に手を当てて苦虫を噛み潰したような顔になったり、力が抜けたのか膝と手を地面に着いてうなり始めた。なんでだろ?
「ヤート、そうじゃねえ…………」
「いくらなんでも斜め上に行き過ぎよ」
うーんと、また僕はなんか変というかズレた事を言ったみたいだ。まあ、でもみんなを心配させないように工芸を頑張って習おう。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
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