王城への旅にて 疑問とケンカ
……良い天気だな。ちょっと日差しが強いけど風もあるから旅をするには良い天気だ。例え今僕から少し離れたところで、王都へ続く街道に待ち伏せて僕達を襲ってきた盗賊の一団を
それとサムゼンさん達が、乗っていた自分達を振り落として盗賊に突撃して行った
というか盗賊の人達はかなりの大人数だけど、なんで騎士・
「今日も良い天気だな」
「ヤート、現実逃避してるところ悪いが、なんとかできるか?」
「……あの感じだと、すぐに終わると思うけど、なんとかしなきゃダメ?」
「まあな。さすがにサムゼン殿達の負担が大きすぎる」
「わかった。
僕は腰の小袋から赤い実を取り出すと、いつものように魔法をかけて赤い煙を発生させる。前にくらった事がある
「サムゼンさん達にケガはない?」
「あ、ああ、我らは大丈夫だ。……先ほどの赤い煙はヤート殿の魔法か?」
「そう、口から泡を吹いてしばらく動けなくなるくらいの、ものすごく辛い煙を発生させる魔法」
「魔馬達の治療を頼みたい」
「毒じゃないから別に治療は必要ない。しばらくしたら動けるようになるよ」
「ヤート、移動の時間が減るから今すぐ頼む」
「そういえばそうか、
今度は青い実から青い煙を発生させて魔獣達の口や鼻から入れていく。……よし、煙を全部入れて治療完了。あとは面倒くさい事を減らすために、起き上がってきた
「ねえ……」
「ガッ、ガア?」
「ブオ?」
「「「「「「ブル?」」」」」」
「一応言っておくけど、次に面倒くさい騒ぎ起こしたら…………この程度じゃ済まさないよ」
魔獣達がすごい勢いで首を振り始めた。これならもう面倒くさい事は起きないと思う。……サムゼンさんの部下が「魔馬が負けを認めるなんて」とか「我らの苦労はいったい……」って言ってるのは聞こえない。
サムゼンさんに僕らを襲ってきた盗賊はどうするのか聞くと、僕の魔法で動けなくなっているから今は放置しておき、あとで別の部下が回収するように手配するって言われた。確かに荷車もないし、大人数を運ぶ方法がないから仕方ないか。
でも、このまま道に盗賊を寝かせて置くわけにもいかないし、わざわざ一人ずつ道端に運ぶのも手間だから
「ねえ、ラカムタさん。はっきり言って魔獣の集団って言ってもおかしくないから襲うには絶対に不向きなのに、あの盗族はなんで僕達を狙ったのかな?」
「……自分達の方が人数が多かったからいけると思ったんじゃないか」
「先程の盗賊はレイヴン盗賊団というかなり有名な奴らだからな。ラカムタ殿の言う通りだろう」
「…………規模が小さかったり集団になったばっかりの奴らだったら、ラカムタさんとサムゼンさんの言う事もわかるんだけど、あいつら有名なんでしょ? それなら勢いだけじゃなくて、襲う相手を選ぶぐらいの慎重さもあると思うんだけどな……」
「ヤート」
「何? 姉さん」
「ガルみたいに考えなさすぎなのはダメだけど、考えすぎるのはヤートの悪い癖だって前にも言ったでしょ?」
「……マイネ」
兄さんが低い声を出したら姉さんに殴りかかり姉さんがそれに応戦した。二人とも走りながらよくケンカできるな。しかもそのケンカが超接近戦で、お互いに顔や身体を狙いながら相手からの攻撃は残らず叩き落とすという無駄に高度なやり取りを手がブレるくらいの速さで僕達と並走しながらやってる。
いきなり始まった事にサムゼンさん達が唖然としてて、ラカムタさんがため息をつく。……なんか考え込むのがバカらしくなる。なんとなく気を使われて話をそらされたような気もするから盗賊の事は置いとこう。それよりもこれからの事を、サムゼンさんに確認した方が良いか。
「サムゼンさん、王都に行くまでにいくつか町や村あるけど、
「そのあたりは問題ない。
「そうなんだ」
「ああ、それに町や村には寄るわけじゃなく事前にラカムタ殿と話し合った結果、移動を優先して本当に町や村の横を走り抜けるだけだから混乱が起きたとしてもごく小さなものだろう」
「それじゃあ、夜は野営? サムゼンさん達大丈夫?」
僕が心配を口にするとサムゼンさんは自信満々に部下の人達を見回して笑った。
「フッ、ヤート殿、我ら騎士も遠征や訓練で野営には慣れている。森や山の中ではさすがに難しいところもあるが、街道沿いの休憩場ならば問題ない。すでに今日の野営予定場所には、町や村と同様に部下を待機させている」
「わかった。協力できるところは協力するから遠慮なく言ってね」
「ふむ」
「どうかした?」
「いや、ヤート殿がいるのは心強いと思ってな」
「どういう意味?」
「遠征で何に気を使うかと言えば、体調管理や食料の確保だ。しかし、ヤート殿がいればそれらの問題は解決する」
「そういう事か。確かに後方支援には自信があるよ。でも、全部に対応できるわけじゃないから過度に期待はしないでほしいかな」
「それはもちろんだ。何事も自己管理と事前準備が基本だ」
さて、さっきの盗賊はたまたまかな? それとも……? まあ、王都に着くまでにどんな事が起きるかで、ある程度は判断できるか。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
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