赤の山にて 青と猪
赤の村に来て随分経つけど、やってる事は散歩したり本を読んだりと黒の村にいる時と変わらない。ラカムタさんに聞いても、黒の村に帰る正確な日程は決めてないって言ってた。こんな感じで過ごしてたら、いざ黒の村に戻った時にちゃんと働けるのか心配だ。とはいえ、どれだけ心配してても最終的に、まあ良いか、その時に考えようっていう結論になる。自分の事だけど、のんびりしたものだ。さて、一応の結論が出たところで散歩に行きますか。
それから今日の散歩の予定を考えていると赤の村の門に着く。交流会に来てから何度も散歩に出ている内に、赤の門番の人達とはいつの間にかあいさつして少し話すくらい親しくなっていた。他の赤の竜人には相変わらず身構えられるけど、何にでも例外はできるものなんだね。
「こんにちは」
「おっ、今日も散歩か?」
「はい。通っても良いですか?」
「あーとな、ちょっと時間もらいたい」
「何か問題ありました?」
「いや、坊主に問題はない。ただな、お前に用がある奴がいる」
「……誰でしょう?」
「今、呼ぶ。おい、お目当ての相手が来たぞ!!」
「感謝します」
門番は休憩所になっている小屋に向かって呼びかけた。すると中から、一人の青の竜人の子供が出てきた。
「お前は……」
「すぐにでも本題に入りたいところだけど、その前に自己紹介して良いかな?」
「……どうぞ」
「それじゃあ遠慮なく、私は青のイリュキン。青の中じゃ、次の
「ふーん、
「聞いた事がないだろうから説明すると、我ら青の
「そう、僕は黒のヤーヴェルト。周りからはヤートって呼ばれてる。見ての通り
「私もヤートと呼んで良いかな?」
「うん良いよ。それで、なんか用?」
「単刀直入に言わせてもらうと、君の魔法について問題のない範囲で構わないから教えてもらえないだろうか」
「決闘の時に言ったけど、僕が自分の手の内を教えると思う?」
「無理を言ってるのは自覚している。けれど、頼みたい」
「質問に質問を返して悪いけど、なんで知りたいの?」
「……そうだね。そこから話さないといけないか。少し話が長くけど構わないかな?」
「特に気にしない。でも、散歩には出たい」
「ああ、私も歩きながらでも構わないよ」
「じゃあ、行こう」
イリュキンと二人で散歩に行く事になった。あっと、一応聞いとかないとダメな事があった。
「一応聞いときたいんだけど、イリュキンは
「…………おそらく大丈夫だと思う」
そこそこの間が、すごい心配だ。
イリュキンと二人で森の中に入ると、すぐに巨体が目に入りその流れでチラッとイリュキンの顔を見たら完全に引きつっていた。物静かな良い奴なのに、なんでみんな怖がるんだろ? それに始めから、この調子で大丈夫か不安だ。
「本当に大丈夫? なんなら今日は
「いっ、いや、私の方が頼んだ側なのだから、君達に何かしら我慢する事はしてほしくない。いつもの感じでいてくれ。すぐに慣れてみせるさ!!」
「……イリュキンがいる時点で、いつもの感じじゃない。それと散歩の途中で体調崩されても面倒くさい」
「大丈夫だ。私の事は気にしないでくれ」
「お前がそれで良いならそうするけど体調崩したらすぐに言ってよ。ひどくなるまで我慢されるとより面倒くさいからね」
「……わかった」
そんな決死の覚悟を込めるなって言いたいけど、なんか気を使うのもバカバカしくなってきたからイリュキンが言ったようにいつもの感じでいきますか。
「今日も散歩に付き合ってくれる?」
「ブオ!!」
「そうか、ありがと。お前がいると安心して遠出ができるから嬉しい」
「ブッ、ブオ!!」
「うん、頼りにしてる。ああ、今日はもう一人いるけど大丈夫?」
「ブ?」
「あそこにいる奴、イリュキンって言うんだ。おーい、あいさつして」
「わかった。初めまして、私は青の竜人のイリュキンと言います。今日は散歩に同行させてもらいます」
「……固くなりすぎだよ。こいつはイギギさんと同じで、あんまり堅苦しいのは好きじゃないよ」
僕がイリュキンのあいさつに呆れていると、徐々に
「ブオ」
「そう、それなら問題ないね。イリュキン、移動して良いか?」
「…………ああ、大丈夫だ」
絶対に痩せ我慢だなって確信ができるくらい声が震えてるけど、言わない方が良さそうだ。まあ、気にしてもしょうがないから行こう。
「なんか食べ頃の物があるところって知ってる?」
「ブ」
「それじゃあ、そこに行きたい」
「ブオ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューなどもお待ちしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます