ep.9 救出
魔物に襲われている人がいる。
その事を認識した瞬間エクスは駆け出していた。
蟻の魔物が勢い良く目の前にある御馳走に齧りつこうと飛び掛ろうとして。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
エクスは声をだし、魔物の気を一瞬逸らす。
そして、その一瞬はエクスが魔物の攻撃を防ぐには充分な時間だった。
『我が剣は燃ゆる炎!我が一閃、止める事叶わず!』
走りながら詠唱し、エクスは剣に指を這わせる。
『付与魔法:炎之剣!!!』
直後、剣から炎が吹き出す。
「はぁっ!」
走りながら襲われている人に一番近い魔物の首に目掛け、斬り下しの一閃。
「ギィッ!?」
そのまま首を落とすと、胴体を魔物の方へと蹴り飛ばし目眩し。
蹴り飛ばした魔物の影になる様に走り、魔物にぶつかる直前で2匹の魔物の間に抜ける。
「ぜぇあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
回転しながら2匹の首と前脚を同時に落とす。
そして、着地すると同時に脚を掴み、スライムの核に向け。
「はっ!!」
─────全力で投げつける。
投げられたその脚は寸分違わずスライムの核を貫き、壁に刺さる。
ここまで僅か1分足らずの事だった。
魔物の死骸が徐々に形を失い、光の粒子を放つ。
「死体が消えていく……やっぱり迷宮か……」
そう言いながら、襲われていた人物へ近付いていく。
(憔悴仕切ってる……それに、顔色が悪い。魔力が枯渇してる……)
「大丈夫ですか?何があったか話せますか?」
そう言いながら、金髪の少女へと手を差し伸べる。
これ以上怯えさせないよう、安心させるように声を掛けた。
頭からぴょこりと生えている猫耳に視線を向けすぎないように。
少女は呆然と目の前の青年を見上げていた。
差し伸べられている手にも気付かず。
(……たすかった、の?)
遅れてやって来る実感はまるで夢の様に朧気で。
それでいて吹き抜ける風が現実だと、優しく教えてくれていて。
「っ…………」
視界が、滲む。
それでも。
(っ、泣かないで、伝えなきゃ……!)
出そうとした声は掠れて、震えて。
「漸く見つけましたよォ?僕の可愛い実験体?」
少女にとっての絶望が、形を成してやって来る。
細身の黒髪のその男はニヤリと笑い
「実験体がもう一人居ますねェ?」
そのどす黒い魔力を放ちながら
「──────逃げられると、思うなよ」
そう言い放った。
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